最愛の人と俺と噛ませ犬と。続【赤葦京治】【完結】

俺の作戦。 ページ11

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赤葦が少女に夏休み期間の臨時マネージャーを依頼した日、赤葦は森に自身の思い人に対する熱意を伝えた。それが少女だとは言わなかったが、赤葦にとって少女以外の選択肢などない。それは森も十分分かっていた。ということを、赤葦は知っていた。そして、森も同じく少女に思いを寄せていることも。



森は少女と同じクラスで部活。ならば必然的に少女を目にする機会も人一倍多いはず。





──Aのことを想っているのなら、最近元気がないことも知ってるよね？





少女はストーカー被害で気を病んでいた。しかし、周囲にはそれを悟られまいと、いつも通りに立ち振る舞っていた。事実、少女の友人たちは何一つ疑問を抱くことはなかった。



しかし、やはり赤葦には所々違和感を覚える少女の素振りが見られた。それは例え赤葦が少女の悩みの種を知らなかったとしても、赤葦には気が付いていた。





──Aは気の落ち込みようを上手く隠せてる。けど、Aのことが好きなら、少なくとも最近Aの様子が変だと疑問に思ってもらわなくちゃ話にならない。Aは何でも自己解決しようとするところがあるから。人に頼ることを知らないから。Aが好きなら、ちゃんとAを支えてあげなきゃ。その為にはまず、Aの様子をきちんと把握できなきゃ。





赤葦の少女に対する想いに、森はほんの少しの焦りを覚えていた。赤葦は本気だと。



そんな翌日、自分の下駄箱に入っていた一通の手紙。たすけて、と一言だけだが、穏やかではない確かさが見受けられる文面。なんとか赤葦と差を付けたいと考えていた森は、そんな考えも相まって手紙の差出人は少女だと判断した。これは実に浅短的判断だった。



森はまさか赤葦の掌の上で転がされているなどとは夢にも思わない。あまつさえ、リードを取れたとすら思っている。



手紙は匿名。それでいて、内容も酷く不鮮明。おそらく少女は今、心理的にも現状的にも直接誰かに相談できない立場に置かれているのだろう。そう判断した森は自身も手紙を送り、自分がいるから、と励ますことにした。一人歩く少女の帰路をそっと見守ることにした。









典型的なストーカーの完成だ。


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