俺から送る。 ページ9
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──筆跡なんか変えても意味ないのに。
赤葦は口から乾いた笑いを洩らした。
その目は酷く虚ろである。
事実、人の筆跡はそうかんたんに変えられるものではない。それは、例えいつものそれとは意識的に変えていたとしてもだ。
──やるならちゃんと、中途半端なんて論外だ。
ビニールの手袋を両手にはめた赤葦は、白い数枚の便箋を取り出した。そして既にシャープペンで書かれている便箋を横に並べる。
そのまま赤葦は、赤ペンと定規に手を伸ばした。そしてそれらを使い、シャープペンで書かれている便箋の内容を殆どそのまま定規文字をもって新しい便箋に刻んでいく。
強く強く。少女への思いを、その一画への筆圧に乗せて。
──筆跡鑑定時には、筆圧も調べるらしい。意図的に筆跡を変えたとしても、大抵の人はなかなか筆圧のことまで目が回らないからとか何とか。
……まあどのみち、愛するAを想うだけで気持ちが昂っちゃうから、自然と手に力が入ってしまうのだけれど。
赤葦は口から乾いた笑いを洩らした。
その目は酷く猟奇的である。
手紙を写し終えた赤葦は、ふう、と一息つくと、書き終えた手紙を封筒に入れ、封蝋風シールを貼った。赤黒い色の蝋には繊細な薔薇の模様が刻まれている。
──まさに、俺からAに送るに相応しい……
赤黒い薔薇の花言葉
【決して滅びることのない愛】
まあ、Aは花言葉なんて知らないだろうけど。
赤葦は優しい笑みを浮かべた。
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ライア(プロフ) - あああああヤンデレぷまいーーーーーーーーーー(^q^) (2019年7月11日 0時) (レス) id: 22a2268380 (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - ぴよ曜さん» ぴよ曜さん、コメントありがとうございます!なんと、この小説で赤葦推しを生んでしまうとは…!!理想だなんて言ってもらえて光栄です!最後までお読み下さりありがとうございました(*´ー`*) (2017年8月26日 0時) (レス) id: 47f42923ee (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ曜 - この小説のおかげで、赤葦推しになりました!(笑)この小説の赤葦は、私の理想です!!完結おめでとうございます!&更新お疲れ様でした!!! (2017年8月25日 11時) (レス) id: 9123716162 (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - 審神者代理さん» 審神者代理さん、コメントありがとうございます!好みに合えば幸いです!もう赤葦さんの溢れる何でも出来る感に頼りきった作品となってしまいました笑まさにスパダリやあ…(*´∇`*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 47f42923ee (このIDを非表示/違反報告)
審神者代理 - 完結おめでとうございます!やっぱりここの赤葦さんは好みだなぁ…赤葦さんは何でも出来る感がすごいありますよね( `-ω-´) (2017年8月21日 21時) (レス) id: d1c49bf55e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たなぱし | 作成日時:2017年5月28日 1時