私ともう一人、二人分の足音。 ページ9
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コツ、コツ、コツ……
二人分の足音が暗い夜道に響く。一つはわざと音を立てているようにも感じた。
少女が赤葦に打ち明けてから五日経った。今日は少女が赤葦の付き添いなしで帰る日だ。
それまでは何事もなく帰路につけていた少女だったが、今日は違う。
何者かが少女の後を付けて来ている。
――まさか、つけられてる……?
少女がそのことに気が付いたのは、家まであと十分を切った辺りでだった。
――え、ええっと、京治が前に教えてくれた、本当に後ろの人が私のあとをつけているかどうかを確かめる方法は……
少女は自分のあとをつける存在に気付いてしまったことの恐怖と不安で、軽くパニックに陥った。無理もない話だろう。
しかし、僅かな理性が自分の唯一の味方である赤葦の存在を思い出させた。
少女は事前に赤葦から聞いていた、あとをつけられているかどうか確かめる方法を必死で思い出す。
――まずは、歩く速さを上げてみる。
コツコツコツ……!
――うう、後ろの人の歩く速さも上がってる……
それでも負けじと、少女は次の方法を試す。
少女は急に立ち止まってみた。
すると後ろからついてきた足音も消えた。つまり、後ろの人物も立ち止まったということだ。
赤葦が言っていたストーカーの特徴にドンピシャなため、少女は既に泣きそうである。
しかし、泣いたところで状況が好転するわけでもないのは百も承知であった。
――向こうは私の怖がっている姿を見て楽しんでいるのだ。そんな手には乗るか。
少女はそう自分を奮え立たせ、最後に赤葦が言っていたことを思い出す。
「そこまでいくと、ほぼストーカー確定って言っていいと思う。だからこれはもし余裕があればでいい。余裕があれば……」
――思いっきり振り返ってみる!!
少女は記憶の中の赤葦と声をリンクさせながら行動に移した。
少女の視線の先に、人影はいない。
――黒だ!
少女は家まで走り出した。
本来ならば家を特定されないようにストーカーを撒く必要があるのだが、既にバレてしまっている身としては直ちに安全圏に逃げておく必要がある。
――…って、京治が言ってた!!
追ってくる気配も足音もなかったのは幸いだった。
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たなぱし(プロフ) - ごくえんろうさん» わ、ヤンデレ牛島君(なんか闇金ウシジマくんみたい←)もご覧になっていだだけてるんですね!!嬉しいです^^牛島君のヤンデレは他ではあまり見かけませんよねー。自分得で書かせていただいてます笑 (2017年3月18日 7時) (レス) id: 8222ef3129 (このIDを非表示/違反報告)
ごくえんろう(プロフ) - たなぱしさん» 私は真っ黒黒葦派です(笑) ヤンデレ牛島君も読ませていただきました! 赤葦君も牛島君も好きなので嬉しいです(*´艸`*) (2017年3月18日 0時) (レス) id: 82fd8ee9bf (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - ごくえんろうさん» たなぱしとしては赤葦君好きが増えて何よりです!ただ、続編では赤葦君の印象がガラリと変わってしまうので……ちなみにたなぱしは真っ白葦も真っ黒葦もイケるクチです。もう赤葦君なら、なに葦でもイイです。赤葦に幸あれ(真顔)← (2017年3月18日 0時) (レス) id: 8222ef3129 (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - ごくえんろうさん» ごくえんろうさん、コメントありがとうございます!うわああ、本当ですね!最後の最後に締まりませんね!←これは圧倒的誤字ですね。指摘ありがとうございます!!! (2017年3月18日 0時) (レス) id: 8222ef3129 (このIDを非表示/違反報告)
ごくえんろう(プロフ) - ストーリー、とても面白いです!赤葦君をこの小説で好きになりました! あの、私と幼馴染と車内で。の最後らへん、『赤葦はスルッと』の部分なのですが、少女戸になっています。誤字ではないでしょうか。長文、失礼しました。 (2017年3月18日 0時) (レス) id: 82fd8ee9bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たなぱし | 作成日時:2017年2月8日 21時