cap13 ページ14
雨澤が逃げ出そうとする。
面倒臭いと思いつつ体を動かす。
警察というのはこういうときに面倒である。
逃げ出そうとした雨澤の腕を掴み、ニッコリと笑った。
「ちょっとお話いいですか?」
雨澤は、青ざめた顔でヒッと息を呑んだ。
が、暴れはしない。
逃げられないと分かっているらしい。
…本当は、向けられた笑顔が恐ろしくて硬直しているだけなのだが。
「椅子、ちょっと借りますね」
毛利探偵は、頬を引き攣らせながら頷いた。
「___いいですか?今回は厳重注意で収めときますけど、次はありませんからね」
「は、はい…もうしませんッ‼」
「じゃあもう帰っていいですよ。二度としないでくださいね?」
「はいッ、失礼しましたァ‼」
終始笑顔だった顔を戻す。
硬直していた表情筋を揉んでいると、新一が近づいてきた。
「凄いね…笑顔が怖かったよ…」
「ちゃんと言い聞かせないと、またするかもしれないからね…」
「でもさ…やりすぎじゃない?皆引いてるし…」
周りに微妙な空気が漂っているのに気づき、すみません、と苦笑する。
毛利探偵がハハハと笑った。
説教をしている間に元の飼い主は見つかったらしい。
消去法で益子さんだろう。
「その若さで警部さんになった理由が分かった気がするわ…」
「凄い迫力でしたしね…」
梓さんとバーボンが言う。
そんなに言われるほどだっただろうか、と首を傾げた。
新一はそんな僕を見て、大きな溜息をついた。
「ただいま」
マンションの自室の扉を開ける。
勿論、帰ってくる声は無い。
少し寂しいと感じるのはずっと彼らのそばにいたからか。
僕は彼らに依存しているのだろうか。
…なんて、くだらないことを考えてみる。
今日一日のことを思い返していると、ズキリと胸が痛んだ。
無視して風呂に入る。
湯船に浸かっていると、ふと昔のことを思い出した。
…僕は陰の存在だ。
ベルモットにもよく言われていた。
___貴方は陰の世界の王子様よ…だから、陽の世界には行かないでね。
王子様。
僕はただの人間なのに、ベルモットはそんなことを言った。
だが、それは小さい頃の話だ。
今は関係ない。
なのに、何故だろう。
新一たちと一緒にいるだけで罪悪感が込みあげる。
新一たちが陽の世界の住人だからだろうか。
…くだらない。
頭に浮かんだ考えを振り払うように頭を振る。
湯船から出てシャワーを浴びた。
___このシャワーが、何もかも洗い流してくれる。
何故かそんな気がして、僕はシャワーを浴び続けた。
78人がお気に入り
「名探偵コナン」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
新羅(プロフ) - ありがとうございます、頑張ります。 (2016年10月30日 7時) (レス) id: 37088600a5 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - これからどうなるか楽しみにしてます。更新頑張って下さい。応援してます。 (2016年10月29日 22時) (レス) id: cb3c3b9b5b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:新羅 | 作成日時:2016年9月4日 10時