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「お疲れ様でした!」
「ご苦労様です。帰り道は気を付けて下さいね」
時計の短針は5の数字を指し、辺りはほのかに林檎色に染まり始めている。アンティーク調の窓から射し込む夕焼けに顔を照らしながら、店長は微笑んで私に小さなケーキ箱を握らせた。
開けてもいいかと目で合図すると頷いてくれたので、遠慮がちに白を開いた。
中に入っていたのは、宝石みたいにきらきらと艶を出す苺が乗ったショートケーキがふたつ。
宝石の苺は白い綿にふわりと包まれている。あまりに美味しそうで、思わず涎が出そうになった。
「ありがとうございます!私これ、大好きなんですよ!」
「はい。そうかと思って
「あまりに美味しそうでつい・・・」
恥じらいから頬を苺とお揃いにして頭を搔くと、其れは嬉しい限りです、と心底嬉しそうな笑みで喜ばれた。店長は優しくて好きだ。
ルンルン気分で行きと同じ道を通り家へ向かう。
もう真っ青な空は真っ赤に変わっているけれど、気分は断然行きより上がっている。
口ずさんでいた〈さんぽ〉の歌も、いい歳なのに気が付けば大きなボリュームで歌っていた。
直ぐに周りを見回し、誰もいないことに安堵し、胸を撫で下ろした。ふと、そこで視界に影が映る。
「・・・あれ、あの子」
錆びたジャングルジムの公園。
行きに見た生気のない男の子が、そこにいた。
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ひぐさん(プロフ) - かみぶくろさん» 有難うございます!子供 滅茶苦茶いいですよね (2021年4月2日 8時) (レス) id: dcd65c88e0 (このIDを非表示/違反報告)
ひぐさん(プロフ) - にこにこ。さん» 有難うございます!ぼちぼち頑張っていきたいと思います・・・! (2021年4月2日 8時) (レス) id: dcd65c88e0 (このIDを非表示/違反報告)
かみぶくろ - 子供zm…ダメだ尊死する…あっ(尊死) (2021年4月2日 1時) (レス) id: 97c794166e (このIDを非表示/違反報告)
にこにこ。 - めっちゃこの小説好きです。頑張ってください! (2021年4月1日 15時) (レス) id: 4bb86706fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひぐさん | 作成日時:2021年3月23日 16時