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自分の家にいるかのようにリビングでくつろぎ始めた。
携帯を見てSNSをチェックしている。
としみつ、そういうの好きだもんな。
すーぐ携帯いじるんだから。
一旦冷静になる。
よく考えたらこの状況、やばいって。
好きな人と家に二人だけ。
勝手に顔が赤くなる。
......っと、好きな人と距離取らなきゃいけないのに私ったら何泊めようとしてんの。
「としみつ、悪いんだけど、帰ってくれん?」
「え?何でよ」
「......えっと、編集に、集中したいからかな」
「ふーん、そっか。それなら仕方ねえな」
やっぱり泊めてもらう気だったようで、突然帰ってと言われて焦っている。
こんな夜に一人で帰らせるほど鬼になった覚えはない。
どうしてこんなに薄情者になった?
としみつのせいだ。
としみつが、人として出来上がりすぎているからだよ。
「今日くらい泊めてくれたっていいやん」
「ごめんね」
「じゃあ、編集頑張って。体調も早く治せよ」
ぶつぶつと小言を言いながらでも私のことを心配してくれた。
そして一人、夜の暗闇に消えていった。
部屋に戻る。
誰もいない、無駄に広い部屋。
さっきまでここにとしみつが座っていたんだ。
としみつの残り香が鼻を掠める。
少しだけ、切なくなった。
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作者名:#Love | 作成日時:2021年4月1日 11時