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遥輝「、、、え、ピアノって楽譜ないと弾けへんのとちゃうん?」

A「え。」

遥輝「え?」

A「それは、アホやで。」

遥輝「えっ、アホなん?」









衝撃を受けたかのように後ずさり



いつもの定位置にストンと腰を下ろす先輩。









見つめられてる視線を



ほんの3秒だけ見つめ返してから



私はまた視線をつまらない楽譜に戻した。









A「楽譜って、1個1個が縛られてる気ぃがするんです。」

遥輝「音が?」

A「うん。やっぱ、全てを決められた音符を見ながら弾くのって、、辛い。」









 





可哀想だなって、いつも思う。









私が好き勝手操ってる音と違って



紙に記された音は、自由じゃない。









 





私の音楽には“自由”が必要。









縛られてない



私だけの、私にしか出せない音が必要。









だから、辛い。









 









そう思ってた。









 









遥輝「俺は嬉しいけどなぁ、」

A「、、、え?」

遥輝「あ、もし俺がその音符やったらやで?」





「そうやったら俺は、Aに弾かれて嬉しいで。」









 









なぜか、鼻の奥がツンと痛む。









さっきまでは気恥ずかしくて逸らすしかなかった視線が





磁石のように引き寄せられ、カチッと合わさる。









 





どうしようもなく、胸が締め付けられる。









 





「縛られとるとか、辛いとか、そういうのはよう分からへんけど、、」

「どんな音でも、Aの音はブレてへん。」

「せやから、Aがちゃんと向き合わなあかん。」









 





優しさ、誠心、期待らが



溢れんばかりにこめられた言葉。









氷のように固まっていた私の偏見が



内側からジワジワと溶かされていく。









それはまるで









 









『じゃあ、私が色をいっぱいつけてあげるね、!』









 









初めて、本物の“音”という存在に出会った時の





言葉では表しきれない程の感動に、この上なく似ていた。









 









 











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Tu9mu7(プロフ) - シノさん» すごく嬉しいです。ありがとうございます!更新頑張ります! (2020年9月23日 19時) (レス) id: 50122a3aa2 (このIDを非表示/違反報告)
シノ(プロフ) - 初めまして!話の展開が素敵すぎて読む手が止まりませんでした!これからも更新楽しみにしています! (2020年9月22日 21時) (レス) id: 3e7adef831 (このIDを非表示/違反報告)
Tu9mu7(プロフ) - みなさん» 楽しみにしてくださってありがとうございます。これからも頑張ります! (2020年8月30日 19時) (レス) id: 50122a3aa2 (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - いつも楽しく読んでいます!更新楽しみにしてます! (2020年8月30日 18時) (レス) id: 5575efce91 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Tsumu | 作成日時:2020年5月5日 23時

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