甘いと苦いの、その間。｛Ren｝ ~second~ (ページ32)

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77　　~平野side~ ページ32

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平野side

　

「紫耀と、Aちゃんって、、、どういう関係？」

　

　

　

“Aちゃん”

その言葉に敏感になっているのは

気づけば、俺も同じだった。

　

　

　

だって、好きだから。

彼女と出会ったあの頃から、ずっと。

　

　

『、、いらっしゃいませ。(にこ)』

『あ、、お久しぶりです、(笑)』

『いらっしゃいませっ！』

　

営業スマイルだったり

ちょっとぎこちなかったり

テンション高めだったり

決して、同じものは1度もなかった彼女の挨拶

　

『平野さん！』

『あれ、、平野さん？』

『、、、平野さん、』

　

俺の名前を呼ぶ、いろんな彼女の声

　

『もし、平野さんがまた私を見つけたら、』

『私のケーキ、また食べてください。』

　

ひたすらに貪欲で

いつも必死で

でもそれに気づかないくらい鈍感で

だけど俺は

そんな彼女の魔法に、まんまとかかってしまった。

まるで

彼女の愛情溢れる魔法をかけられて生まれ続ける

天才的なケーキたちと同じように

心を奪われたのは

どうしようもなく、一瞬だった。

　

　

　

紫耀「、、、もう、3年くらい前かな、」

廉「3年、、」

紫耀「俺んちの近くにあるケーキ屋の店員さんが、Aちゃんだったんだ。」

　

自分で言葉にしておいてなんだけど

3年、という時間の経過がやけに虚しく感じた。

それがバレたのか否か

廉は俺の言葉を反復するように呟くと

なぜか眉間にシワを寄せ始めた。

　

そうだよ。

廉が思ってるより、俺とAちゃんには思い出がある。

逆に言えば

廉が思ってるより、今の彼女の瞳に多く映ってるのは俺じゃない。

　

だから廉。

俺は、容赦なくAちゃんを奪いに行くよ。

本当に必要なのは俺だって事を

彼女に思ってもらえるように

もう1回、スタートするだけだから。

　

手、抜くなよ。

　

　

　

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