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A「永瀬さん？」
廉「、、、食べる。」
A「え？」
廉「今食べたい。」
A「え、でも、もう夜ですし、」
廉「そんなん関係ない。」
A「じゃあ、、ふ、太りますよ？」
廉「俺に限ってそれはあらへん。」
A「う、、、」
たった今、全ての女を敵に回した永瀬さんだけど
押しに弱い私は結局、時間外営業を強いられるハメに。
新たにフォークを手にして戻ってくると
ケーキに見とれる永瀬さんにちょこっと見惚れてから
箱からケーキを取り出した。
A「はい、どうぞ。」
廉「いただきますっ、」
彼が急ぐようにして口に運ぶのは
私オリジナルの“洋梨のタルト”。
色々考えてはみたものの
1番自信があったのが、この洋梨を使ったタルトだった。
昔、父が働いてたホテルのレストランに
母と2人でよく行っていた。
父の仕事をしている姿を見に行ってみよう
なんていう私の提案がきっかけになって。
そのレストランに行く度に
必ずいつも頼んでいたのが
洋梨のタルトだった。
やっぱりそこのタルトが1番おいしかったけど
そのタルトを真似して、母と一緒に手作りする時間が
小さい頃の私にとって、1番大好きな時間だった。
それのおかげで
私の夢が固まった、と言っても
きっと嘘にはならないだろう。
コップに水を注ぎながら
少しだけ昔の思い出に浸っていると
ふと、彼の視線がこっちを向いてる事に気づいた。
廉「、、、Aちゃん。」
A「はい？」
廉「水が、」
A「水？、、うわぁっ！」
時すでに遅し。
まさに今、その言葉がピッタリだった。
私が注いでいたコップから
もう既に水がとめどなくこぼれ出していて
案の定、手もテーブルも床もびしょびしょで
思考が一瞬停止してしまった。
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作者名：Tsumu | 作成日時：2020年9月23日 20時
