30 ページ31
・
・
・
A「いらっしゃいませ。」
「、、こんにちは、」
ほんのり暖かいお昼過ぎの店内に
大人な雰囲気の女性の笑みが、花のようにフワッと咲いた。
彼女はショーケースをじっと見つめると、呟いた。
「全部美味しそうですね、(笑)」
A「、、、そう言って頂けて嬉しいです。どれになさいますか？」
どうしよう
なんて言いながらも輝かせる瞳が美しく思えたと同時に
心のどこかで彼女の姿を
『、、、もう、全部食べたい。』
『やけど、ほんまに選べへん、、』
永瀬さんに重ねてる自分がいた。
「、の、、あの、店員さん？」
A「、、、す、すみません、」
「えっと、これとこれを2つずつください。」
A「かしこまりました。少々お待ちください。」
決まり文句を言い終えると
私の覚束ない接客を見かねた優香が後ろから変な目を向けていた。
だから
大丈夫、と親指を立てて見せると
優香は怪しげな視線を残しながらも、スッと顔を引っ込めた。
それから
ケーキを心待ちにしてくれている女性の方に向き直ると
彼女の瞳に映っていたのは、ケーキではなかった。
「、、、綺麗ですね、この花瓶。」
A「、、えっ？」
「え？ここに飾られてるの、そうですよね？」
彼女の視線の先には
今までは寂しかったショーケースの上に最近飾り始めた、小さな花瓶。
テンションがフツフツと沸き上がりそうになる中
それを誤魔化すように忙しく手を動かしながら、彼女の声に耳を澄ませた。
「すごく綺麗で見とれちゃって、(笑)」
A「、、、これ、頂き物なんです。」
「そうなんですか？」
A「はい。今の1番のお気に入りなんです。(にこっ)」
自分でも分かる。
なんて分かりやすい満面の笑みなんだろう、って。
何度目か分からない感謝が芽生えた相手は
さっき私を一時的に混乱させた、永瀬さんしか居ない。
だってこの花瓶は
永瀬さんからの“お礼”だから。
・
・
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 371人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Tu9mu7(プロフ) - じくねこさん» コメントありがとうございます。更新頑張ります！ (2020年9月11日 21時) (
レス) id: 50122a3aa2 (このIDを非表示/違反報告)
じくねこ - 更新ありがとございます (2020年9月11日 21時) (レス) id: 1083519e52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Tsumu | 作成日時：2020年8月19日 19時
