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彼女もといAと話していると、どんどん気持ちが膨れ上がった。
Aを自分のものにしたいと。
『ビール持ってくるので座ってて下さい』
ソファーに座るのを促し、彼女は台所の冷蔵庫に向かう。
一瞬でも離れたくない、そんな気持ちが沸き上がり静かに後をつけた。
冷蔵庫を空け中をみるとビールしかない。思わず
「ビールしかはいってないね」
本音がボロりと口から出てしまう。
『ひっッ!?』
僕の声を聞いたAは驚き声をあげた。
「その驚きかた酷くない?」
知らない人に声をかけられた反応みたいで寂しくなった。
『だって座ってたのに』
座って待ってるつもりだった。
けど、離れたくなかったなんて言えず
「冷蔵庫チェックみたいな?」
適当な理由をつけ、笑いごまかす。
彼女とソファーに座りビールで乾杯。
目の前にはおつまみがあり、お腹が減ってないはずなのに無性に食べたくなった。
『残り物で作ったので味の保証はできないですが、食べます?』
見兼ねた彼女が勧めてくれて、「うん」と言うとお箸を取りに行こうと立ち上がる。
「この箸使うからいいよ」
Aがつかっただろう箸に手を伸ばした。
普段であれば誰かが使った箸なんて使用しないのに、今日は違う。
Aのだから、嫌じゃない。
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作者名:ドライ | 作成日時:2023年6月8日 12時