い ページ4
世界までもが寝静まってしまったかのように思える、夜の時。
全ての仕事を終えた俺は、夕食後に友幸がくれた袋と向き合っていた。
真っ赤な袋と、透き通った緑のリボン。
見覚えがあるようで、ないような。そんな色合い。
「友達もいなかった俺に……相棒何ているわけないのにな。」
ぽつり、と言葉を溢す。
……自分で言っておいて何だが、やっぱり悲しいな。心が痛い。
送り主に心当たりは微塵も無い。……が、友幸が言っていた通りその人が本当に泣いていたのだとしたら。
人違いだったとしても、受け取って置いた方がいいのかも知れないな。
そう勝手に解釈すると、小さな包みの紐を解く。
……途端、ばらばらと袋から出て行く、これまた小さな塊たち。
溢してしまわないように。と慌てて手で受け止めた。
小さかったことが幸いし、どうにか床に落とすことだけは回避することが出来た。
ほっと安堵の息を吐き、落とさないように。ゆっくりと手を開いた。
「これは……クッキー…？」
様々な形をしたそれらは、どうやら手作りのようだ。
…でも、何だろう…見覚えが、ある…？
見たことの無いはずのクッキーに、何処か懐かしさを覚える自分に疑問を抱いた。
しかし、それと同時にもう一つの懐かしい衝動に駆られた。
"……美味しそう。"
きっとモノは違うが、俺は昔、そんなことを心から思った気がする。
ただの気のせいかも、しれないがな。
「とりあえず、食べてみるか。」
誰に言うとでも無くそう呟くと、目についた一つを手に取った。
注射器のような形のそれを、何故か利き手ではない左手で。
何も無い、ただ包帯だけを巻いたその手を。夜の風が優しく撫でていった。
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