*.ふぁんぽん詰め.* (ページ1)

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ふぁんきぃ..｢掴めないもの｣ページ1

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『Aちゃん、俺と付き合わへん』

揶揄う様に、面白がる様に笑って
私に話しかけるのは貴女一人。

『何で私に』

正直執拗かった。
相手にするのも嫌だった…んだと思う｡
でも、本当は嬉しくて楽しくて仕方がないのを隠してただけなのかもしれないな

『欲しくて堪らないものが、この瞳に映ってるんやで。手に入らないって苦やん』

まあ、女ったらしは許せないけどね。

嗚呼、でもはいはい。最後の言葉は納得できるかな
…まあどうせ、他の人にも同じこと言ってるんだろうけど。

新しいもの欲しさで、私に話しかけたんでしょ

そうだったら、楽なのに。

「ふぁんきぃ、元気でな」

この瞳に、確かに映る、君。
手を伸ばさなくとも、届く距離だ

それなのに
私は何もせず、何も言わずに俯いた。かれこれ数分立ち竦んだだろうか

永久狐さんは、何度か私を心配そうに見て
私が入れる話題を作るように、ふぁんきぃに再び話しかけた｡

チャンスは幾らでもあった。
逃したのは自分。

そんな無駄な時間を過ごしていれば、勿論時間は早く来てしまうもの。

ふぁんきぃは、ゆっくりと此方に背中を向けた

…せめて最後に話せばよかったって、後悔するだろうなぁ

「またね」

そっと呟いた私の声は、周りの声や雑音でかき消されて、近くにいた永久狐さん達にしか届かない
いいや、この人達すらも届いてないかもしれない。

…はずなのに

｢うん、またなあAちゃん｣

(この猿は、耳もいいのか)
と、私が眉を顰めたのは、少しの苛付きと少しの嬉しさ｡

本当、聞こえない方が良かった。
だって、もっと話したくなる

…なんて、さ。
嬉しくて、聞こえた事が嬉しくて涙が出た｡

そうだね、辛くて堪らないね
目に映るものが手に入れられないなんて

でも、案外今度会った時は手に入れられそうじゃない

なーんてね