6 ページ27
｢あ、櫻井せんせ。｣
｢やっほー。ちょっといい？｣
今日は本格的に治療を始める日で、一日中点滴をつけてベッドで安静にしていないといけない。
だから院内学級にも行けなくて。
そこで、逆に櫻井から訪ねてきてるのだ。
｢はいこれ。｣
｢進路希望調査、？｣
｢高校の方から届いたんだ。｣
｢そっかぁ。｣
第3希望まであるその紙をじっと眺める二宮。
｢将来どんなお仕事がしたい？｣
｢うーん、｣
来世のことばかりが頭にあって、なにも浮かばない二宮。
｢病気のことがあるし、どこも入学させてくれないよ。就職するのだって、結局はすぐ入院して働けなくなっちゃうし。｣
最終的に出た言葉はこれ。
｢あっ、ごめん。ってのは冗談で、えーっと、僕は、｣
櫻井の暑苦しい眼差しに耐えられなくなった二宮は初めて思ったことをそのまま口に出してしまった。
そしてその事に慣れていなさすぎて、すぐに笑って誤魔化そうとする。
けれど、櫻井は動じない。
ニコリともしない。
｢櫻井せんせ、やだな、冗談通じないの？｣
泣きそうな二宮。
だんだんと眉が下がっていく。
そこでようやく櫻井が口を開く。
｢冗談なんかじゃないでしょ？本音でしょ？｣
いつもの太陽みたいなテンションとは違い、月のように静かで、じっと見つめると怖ささえ感じてしまうような声色。
｢小さい頃から何度も入退院を繰り返してきたからこそ、現実ばかりを見て、絶望して、希望も持てなくなったんだよね？出会った時から、キミの今世への期待が感じられなかったんだよ。｣
｢え、？｣
｢この世界は諸行無常。
スマホって10年前はなかったでしょ？でも急激に普及して、今ではほとんどの人が使ってる。
それと同じで、キミの病気の治療法も10年後には見つかるかもしれない。10年後キミはありえないくらい元気に働いてるかもしれないい。
だからそんな顔しないで、希望に満ち溢れててほしい。｣
腑に落ちる話で、思わず涙をこぼす二宮。
｢“来世に期待”か。それな。けど、今世の未来も楽しみで仕方がないよ、、。｣
病室でひとりSNSをみる二宮。
希望に満ち溢れた顔でそう言うと、ベッドから起き上がり、学校からの課題に黙々と取り組む。
｢頑張ってるね。ほい、差し入れ！｣
｢ありがと、。あのさ、僕、建築士目指す。勉強して指定校で大学入る！｣
櫻井からの報告を受け様子を見に来た大野。
希望を持った二宮を見て心底嬉しそうにしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 278人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
賞味期限(プロフ) - ぴんさん» ありがとうございます😭不定期になってしまいますがこれからも投稿し続けていくんで気長に待っていただけたらなと思ってます！いつも本当に感謝です💃 (4月2日 22時) (
レス) id: 8509a099d4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴん(プロフ) - あわわわわわわわｱｾｱｾｱｾｱｾ 革命起こしてましたびっくりwwwwww 最近少しお休み期間もあったのでほんとに心配しましたぁぁあああ😭😭😭😭よかった。お仕事お忙しかったんですね、お疲れ様です😭😭 (4月2日 14時) (レス) id: 218c45e5e6 (このIDを非表示/違反報告)
賞味期限(プロフ) - ちえさんさん» ありがとうございます🥺静か〜に、地味〜にツボ押す四男きゃわですよね♡ (4月2日 12時) (レス) id: 8509a099d4 (このIDを非表示/違反報告)
賞味期限(プロフ) - ぴんさん» うわわわわわうれしい😭革命起こさないでください笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑 (4月2日 12時) (レス) id: 8509a099d4 (このIDを非表示/違反報告)
賞味期限(プロフ) - うすしおさん» こちらこそ長い間待ってていただけて嬉しいです！ありがとうございます！ (4月2日 12時) (レス) id: 8509a099d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：賞味期限 | 作成日時：2024年2月15日 1時
