密室で ページ32
｢まただ……｣
芸能人である俺を差し置いて、メイク室で髪の毛をセットしてもらってる俺のマネージャー、松本潤。
文句なしのイケメンで、芸能人との交流も多く、なぜ表舞台に立たないんだ。というのが俺の中での永遠の疑問。
｢おっ、三宅さんお先です！｣
俺を見つけるとすぐに、真っ白な歯を出し、さわやかに笑いかけてくる。
｢“お先です”じゃないよ〜。ったく！今日もかっこいいな！｣
彼の隣に腰掛け、俺もメイクをしてもらう。
鏡越しに嬉しそうにこっちを見てくるコイツは、裏の世界には勿体ない存在だ。
｢このままで失礼します。
今日の予定なのですが、レギュラーを2本撮りまして、その合間にドラマ関連の取材、そして午後4時に名古屋行きの新幹線に乗ります。それまでに収録が終わるよう、意識して収録に臨んでくださいね｣
｢はっ、はーい！｣
(やべっ、パッキングも何もしてなかった！)
明日の名古屋公演が楽しみで、ずっとワクワクしてたのに、肝心な準備を全くしていなかった俺。
怒られるのが怖くて、とりあえず適当に返事をしておいたがどーしようか。
そんな時にある人物の顔が脳裏を過ぎる。
『今日休みだったよね？』
『うん』
『悪いんだけどさ、2泊3日分の服とか諸々パッキングして湾岸スタジオまで持ってきてくれないかな』
『いいよ』
あっさりした返信で素っ気ない感じの弟。
だけど、聞き分けのいい子だから素直にOKしてくれる。
｢よかった、、｣
あまりの安心感に小さく声を漏らすと、
｢また忘れ物して弟に届けてもらおうとしてない？｣
と隣のマネージャーが目を光らせた。
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作者名：賞味期限 | 作成日時：2022年9月25日 14時
