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「ただいまッ!」
「おかえりー」
奥の方から諒の声が聞こえた。
來夢は急いで靴を脱ぎ、部屋に入る。
「來夢くん、帰ってくるの早かったねー?」
來夢はポケットから札束を出す。
「これで、足りますか?」
諒は目を見開く。
「これ…いくら?」
「500万です」
「來夢くんが出ていってから5時間しか経ってないんだよー?どうやってこんなに…」
「…俺、演技が上手いってカゼに言われたんです。財布を無くしたふりをしていろんな人に声をかけました」
「頑張ったねー。來夢くん頑張ったから、俺も道具集めるために、やる気出さなきゃー」
「ということは…足りるんですね?」
「こんだけあれば十分」
來夢はホッと胸を撫で下ろす。
「よかったぁ…」
「じゃ、俺今から行ってくるから」
「お願いします」
諒は部屋から出ていく。
來夢は慌てて追いかけた。
言い忘れてたっ!
「諒さんっ」
「ん?なにー?」
「…諒さんもケガしないで下さいね」
諒はポンッと來夢の頭に手をのせた。
「…っ」
「大丈夫だよー。ありがとう」
「い、いえ…」
「いってきまーす」
「行ってらっしゃい…」
ドアがバタンッと閉まる。
來夢は腕の服のそでをめくった。
鳥肌がビッシリと出ている。
何で諒さんに怖がってるの…俺。
いや、違う。
触られるのが怖いんだ。
あの人に触られたところが疼いてきた。
やだ…やだ…っ。
あの時の感覚を思い出してしまう。
気持ち悪い…っ。
呼吸が荒くなってくる。
來夢は諒に嘘をついた。
財布がないふりしたんじゃないのに…。
カイという男の顔が頭から離れない。
記憶を抹消したい。
だからって後悔したワケじゃなかった。
これでカゼは助かるかも。
カゼを助けたかったから…。
そう考えると少し落ち着く。
來夢は深呼吸をする。
…カゼたちには今日あったこと、絶対に話さない。
隠しとおすんだ。
バレたら引かれる。
軽蔑の眼差しでみられる。
そんなのヤダ…。
絶対に誰にも言わない!
來夢は強く決心した。
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作者名:みあゆい | 作成日時:2019年12月6日 17時