少女の演ずる人形劇-マリオネット- (ページ24)

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第24話ページ24

サァと揺れる木々の隙間を歩くと、見えてくる木でできた小屋。
こんな場所、この街ではきっとここしかない。
静かで、時間の流れがゆっくりな場所。
最近でも、一日に一度は訪れている。

お義父さんが知らない唯一の場所。

氷水につけてある缶のココアを取り出して、穴や開けた跡などが無いか慎重に確かめる。
どちらも無いことを確認すると缶を開き、少しずつ飲む。

木でできた椅子に腰掛けて、時間が経つのを待つ。
30分経ったら雪花に戻ろう。
そう決めて、しばらく休憩することにした。

＊

早足で歩く。
高層のビルディングに向かう。

「警察が動いている」と、A-001から情報が入った。
計画通り進んでいるんだろうと、その情報に安堵していた。

それなのに、依里が情報を置いて来たなどと。
そんなミス、彼女はしたことがないのに。

人を避けながら街を歩き、着いたビルディングのエレベーターに乗って直ぐ扉を閉じる。
7のボタンを連打する。

動揺を隠し切れない。
彼女が情報を置いて来るというミスをするだなんて。
無理をさせすぎたか、鈴音との接近はやはり危険だったか、それとも“彼奴”に会ったのが原因なのか。

7階の一室、依里が隠れ場所だと言っていた704号室に駆け込む。

……いない。

依里が、彼奴が、いない。

報告した場所に居ないのも、始めてだ。

何が変わった？何が悪かった？

「……黒崎様？」

背後から声を掛けられ振り返ると、そこに立っていたのはA-002だった。

「ちょうど良いところに来た。依里はどこだ」

「すみません、私は……ですが、A-001が道で遭遇したと」

「……わかった、向かう。お前は雪花に戻れ」

「はい」

704号室を飛び出し、慌てて雪花に走る。
A-001から情報を聞き出す為。
依里がどこに行ったのか、確かめる為。

＊

困惑。
嵐のようだ、と感じた。

突然現れて、自分の腕を刺して、悲鳴をあげて、それで。

「……どう、なったっけ」

もう、何も思い出したくない。
大した思いはしていないのに。
辛いわけでもないのに。

ただ、何も思い出したくなかった。