少女の演ずる人形劇-マリオネット- (ページ23)

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第23話ページ23

ものすごく単純で、複雑さなんて一つもなくて、小説なんかでもよく見る方法。

それなのに、二人共見るからに騙されてる。

どうして、いつもこんなに上手くいくんだろう。
私はただ言うことを聞いているだけだから、私の力じゃないのはわかってるけど。

「大丈夫、立てる？」

どうして、お義父さんはこんなに凄いんだろう。

これだって、考えたのはお義父さんで。
私はただお義父さんの言う通りにしているだけなのに、こんな風に成功していく……。

「うん……」

怖くなるくらいにいつも簡単で。
辛くなるくらいにいつも単純で。

お義父さんの言うことを聞いていれば、どんなことでも何とかなるんだって。
そう、はっきり実感する。

家を出て、女の人に着いて行く。
歩道を歩いて、横断歩道を渡って、着いた場所は交番だった。

ほらね、お義父さんの言う通りに全部が進む。

お義父さんに言われた通りポケットからナイフを取り出して、女の人の背中を刺す。

「っ、ぁ……！」

ポタポタ、赤い液がいくつも滴る。
薔薇みたいとか花弁みたいとか喩えられるけど、私はそうは思わない。
どちらかと言ったら、ワインみたいな＿＿。

「お、おい……！」

警察官が慌てて飛び出してくる。

けど、追いつかせたりしない。
建物の隙間を通って、高いところに登って、飛び降りて。
“雪花”で教えられた事を全部使って、警察官から逃げ回る。

顔は見られちゃったけど、きっと問題無い。
私が女の人を刺したナイフは置いて来たけど、付いている指紋は私と“あの子”と女の人の三人分だから。
それに、私は怪我をしていたし。

コンクリート製の壁のような仕切りから飛び降りると、目の前に涼森さんが歩いて来た。
赤い頭巾を被っているから、仕事から帰るところかな。

「あ、亜依さん……！？」

「わ、亜華莉ちゃん。なにしてるの？」

驚いている涼森さんに合わせて、此方も驚く演技をする。
こんなに簡単な演技、してもしなくても変わらなそうだけど。

でも、お義父さんの命令だから。

お義父さんの言う通りにしていれば、全部何とかなる。
全部が、良い方向に進む。

「おしごとが終わったので、次のおしごとの場所に向かってるんです。亜依さんは？」

「ちょっと警察の人から逃げてて……ふふ、けっこう楽しいよ？」

そう言って微笑んで、驚いた顔の涼森さんに手を振ってまた走る。

雪花の場所がバレたら困るから、雪花には帰れない。

“あのマンション”に、向かうことにした。