第21話 ページ21
また雪花に向かう。
今度は、会ったことのないもう一人の“特別な商品”に会うために。
受付で一通りやりとりを済ませて、また地下に向かう。
今度は前の地下とは違くて、まるで和室のような場所。
そこに、正座している和服の少女がいた。
「あ……はじめ、まして。夜桜彩乃です」
少し不自然な笑みを見せて挨拶する少女。
今までの二人とは違う、おどおどした態度に違和感を覚えた。
「特別な商品、なんですよね？」
「っ……は、い」
怯えた態度。
やっぱり、今までの二人とは違う。
「……慣れているんじゃないんですか」
「ご、ごめんなさ＿＿」
「謝ってほしいわけでも責めているわけでもありません。そもそも私は、ただ質問があって来ただけですから」
厳しく言葉を投げかける。
大人しいからって、信頼するのは良くない気がする。
同じ“特別な商品”である他の二人は、掴み所がなかった。
それなのに、彼女一人だけこんなに普通な少女であるはずがない。
「……亜依について、何かご存知ですか」
「……えっと」
困り顔をする少女。
……何か、おかしい。
「あの……私、花倉さんとお話する機会が無いので……涼森さんなら、何か知ってると思うんですけど……」
どうして話す機会が無いんだろう。
同じ雪花の、ましてや“特別な商品”同士なのに。
「……そうですか、なら良いです」
靴を履いて階段に向かう。
まだ時間は余っているけれど、途中退室は良いらしいから。
「あの……！」
後ろから不意に声をかけられる。
振り返ると、彩乃が立ち上がって此方を見ていた。
「まだ、お時間ありますし」
妖艶な笑みを見せ、さっきとは違う声色で。
「少し、遊んで行きませんか……」
＊
「彩乃ちゃん」
「っ……」
冷たい声。
やっぱり、この声は苦手。
亜依さんの冷たい声は、やっぱり……。
「……お姉ちゃん、帰っちゃったね」
……寂しげな、亜依さんの声。
どうして。
私がいなくなったって、こんな声は出してくれないのに。
まだ会って間もない彼女が、亜依さんをこんなにも寂しがらせることができるの？
「……また、呼びますか？」
そう言うと、亜依さんの顔がパァっと明るくなる。
「ほんと！？」
……そんな顔をされて、私が断れるわけないって知ってるみたい。
私、亜依さんが好きなんだもん。笑顔なら、なおさら……。
「はい……絶対」
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作者名：うさぎ@りんご飴 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/47e05267373/
作成日時：2016年12月7日 19時
