少女の演ずる人形劇-マリオネット- (ページ2)

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第2話ページ2

とりあえずココアを淹れ、仕舞いっぱなしになっていたソファに茉依を座らせた。
昨日貰った飴と、今日食べる予定だったショートケーキを取り出して。

「どうしたの？」

恵美が優しそうに微笑み、身を乗り出して茉依に問う。

「わたしのこと、ころしてほしくて」

茉依はにこにこと笑い、嬉しそうに言った。

「え……」

「……そ、れは」

つい、目を逸らす。
殺して、と。
あんなにも愉しげに言った茉依に、気まずさを感じて。

「ムリですか？」

わざとらしい茉依の表情、不思議そうなあざとい顔。
まるで、作り物のようだと感じた。

「え、と……」

恵美が気まずそうにチラチラと目を泳がせる。

唐突に家を訪ね、唐突に殺人を依頼した小学生。
それがどれほど異様かということには気付けず、ただその光景に困惑する。

「……ムリならいいです。最初から期待なんてしてなかったので」

突然、声が冷たくなる。
急な状況の変化に追いつかないままの脳が、この子は危険だと警笛を鳴らす。

「さよなら」

茉依は躊躇い無くすんなりと立ち上がった。
が、ドアには向かわず、そのまま静かにキッチンに向かった。

「ち、ちょっと……」

恵美が立ち上がりキッチンに向かう。
そして、目に入る赤い何か。

それは、液体のようで。

それは、花弁のようで。

「恵美！」

理解が追いつかなかった。
何故、茉依がキッチンに向かったのか。
何故、恵美の指から血が滴っているのか。

そもそも、どうして茉依はここに来たのか。

「あはっ……」

床に落ちた恵美の血を見ると、茉依は心底愉しげに笑った。

「大丈夫！？」

ハッとして恵美の元に駆け寄ると、恵美は左腕を抑えて震えていた。
顔は恐怖に歪み、立っていられないくらいに足がガクガクと震える。

「だい、じょうぶ……」

茉依がまた歩き出す。
その手に刃物は無いけれど、愉しげな表情を見ると恐怖で足がすくむ。

茉依は玄関に向かい、ドアノブに手を掛けると一度こちらを振り返った。

「また来るかもしれないけど、よろしくね？」

愉しげに、無邪気に笑いながら、茉依は家を後にした。