きくちの文字と上靴 ページ3
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校門を抜けると、同じ色の制服がたくさん見えた。
教室までの道のりを歩きながら、思い出す。
いつから隣にきくちがいたか。
小1の時は、同じクラスじゃなかったしな…
なんて思いながら、昇降口で靴を履き替える。
上靴には、《 菊地 》の文字。
「 あ、そうだ。 」
思い出した。
あの時だ。
小2の時、
同じクラスで靴箱が隣だったきくちの上靴を
間違えて履いてしまった時があった。
上靴には、大きく《 菊池 》の文字があったのにも
関わらず気づかなかった、わたし。
だいたい同じくらいの足のサイズだったのもあって
気づかずそのまま、
履いて教室へ足を進めようとした。
その時、
「 おい、俺の上靴、勝手に履くなよ。 」
そんな声と同時に、わたしの肩が誰かに掴まられた。
後ろを振り向けば、眉間にシワが寄った男の子。
「 え、なに? 」
何を言ってるのか分からなかった私は、
その男の子に問いかけた。
「 ん! 」
そう言いながら、勢いよく下を指差した。
その指の先を辿れば、わたしの上靴。
ではなく、よく見ると見たことない綺麗な字で
《 菊池 》と書かれていた。
「 ごめん、きくち。 」
急いで上靴を脱いで、自分の上靴を履いた。
風磨「 きくちじゃなくて、風磨な! 」
なんて言いながら、わたしと同じ教室へ駆けていった。
「 ふ、 」
懐かしい時期を思い出して、気づいたら、
頬が緩んでいた。
長いと感じていた教室までの道のりもあっという間に感じた気がした。
教室の入り口で1番後ろの窓側の席を真っ先に見た。
そこの隣の席、つまりわたしの席を目指して歩いた。
風磨「 はよ、 」
わたしがバッグを机に置いた音で、
突っ伏していた体をゆっくりあげて、
少し低い声でそう言った。
「 おはよ、きくち。」
いつものことなのに、なぜだか、
特別な感じがした。
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作者名:まる | 作成日時:2018年10月21日 0時