惨拾惨.噺 ページ26
翌日、私は最早恒例となっている主さんの仕事を自室でしていた。
すると、襖の前から気配を感じる。
私は清潔な手拭いを用意して、その人を呼ぶ。
『どうぞ、入ってきて。見習い。』
そう言うと、スッと襖を開けて入ってくる見習い。もう見習いさんとは呼ばない。
見習いは何処か暗い表情でうつ向いていた。心なしか、負の感情も混じってる気がする。
隼人「…乱様は、今の主さんについて、不満はないんですか?」
『無いに決まってるじゃん。いきなり何?そんなに主さんが嫌い?』
そう言うと、うつ向くのを止めて此方を見る。
表情は色々な感情が混じってるが、その中には動揺が一番大きい。
恐らく、「どうしてバレた」とか思ってるんだろうね。馬鹿みたい、神様をそんな簡単に偽れるとでも?
隼人「…じ、実は、これ…先輩に、やられて…」
そう言うと、見習いは自分の右腕を見せた。
そこには、幾つもの切り傷。
それを見た時、私は小さく溜め息を吐いた。
本当、この見習いは学ばないよねぇ……
主さんは右利き、見習いは左利き。
主さんが仮に見習いに傷を付けるなら、見習いから見て左になる。
それなのに、右に傷が付いてるって事は…
察しの良い人なら気付いただろう。
『…あのねぇ、見習い。色々聞きたい事はあるけど、神様を偽れるなんて甘い考えは捨てた方がいいよ。後…どうして、それをボクに見せたの?』
隼人「そ、そんな……あ、えっと、その…」
やっぱり。あれは私を仲間にする為に、つけた傷だ。見せたのも、同じ理由だろう。
全く、こんな奴が今後、神様を集めて指揮すると云うのか?
『…まぁいいや、出ていってよ。』
ぐいっと見習いを外に引っ張りだし、ついでに見習い反対方向に向かう。
角に曲がった所で、機動を向かって厠に行く。
個室に入った所で、音を出して吐く。
ご飯ではない、血だ。
やっぱり、霊力の反発が原因だろう。
ほんの数分話すだけでこれだ、個室で話し合いなんてしたら生存にも傷が付きそうだ。
洗面所で口元を洗い、手にしていた手拭いで口元を拭く。
洗えてなかった血を拭う。
『…さっさと終わんないかなぁ…』
見習い研修は一ヶ月。こんなに一ヶ月が長いとは思わなかった。
さっさと出ていって貰わないと、私が我慢しきれなくて見習いを襲うかもしれないし、破壊されるかもしれない。
何とか穏便に済ませよう。
そう思い、手拭いをすぐそばに捨てた。
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作者名:赤林檎 | 作成日時:2019年2月16日 17時