32．きっと私は ページ35
水の音が、耳に響く。
何処か懐かしく、恨めしい音だった。
＊＊＊
『ん……あ、ここ…』
薬研「よぉ、目覚めたか、乱。」
目の前には、胡座をかいている薬研がいた。
どうやら、新撰組部屋から粟田口部屋に移されたらしい。
周りに兄弟はいないが、そこらに転がっている遊び道具がそう物語っている。
ゆっくりと起き上がる。
『……私、どうしたんだっけ。』
薬研「いきなり倒れそうになったと思ったら、本霊の三日月の旦那が現れてなぁ。
…乱の前世、とやらを聞かされた。
詳しくは本人に聞け、と言っていたがな。」
…そうだ、確か旅人さん…三日月さんが現れて、倒れる私を支えてくれて…
それで、倒れたんだっけ。
…感謝、しなくちゃな。
薬研「なぁ、乱。前世で、一体何があったんだ？人間だったんだろ？
それは…前世は、きっと乱が倒れた理由と、三日月の旦那が現れた理由にもなっている。」
『っ……』
掛け布団の端をぎゅっ、と掴み、眉間に皺を寄せる。
三日月さん…言っちゃったんだ……
前世…忌み嫌われた、
『……薬研はさ、もし……兄弟が変なものを持ってたら、どうする？
もし、本来ないものを抱えて生きてたら、どうする？』
握った布団を見つめたまま、薬研に問う。
薬研はしばらく考えた後、息を吸ってこう言った。
薬研「……形がどうであれ、血が繋がってないにしろ、兄弟は兄弟だ。
普通に弟として接する。それ以上も、それ以下でもない、それが俺の答えだ。」
……いいなぁ。
いいお兄さん持って、甘えられて。
私なんて、兄弟どころか、親さえもいなかったから。ひたすら憧れる。
薬研の表情は分からない。しかし、薬研は次にこう言った。
薬研「だから、乱。話してみろ。その質問をするって事は、通常にはないものを持ってるんだろ？
大丈夫だ。
妹であれ、異形であれ、俺っちはお前の兄だ。
だから…言ってみろ。」
酷く感動した。
感動して、布団を涙が濡らす。
こんな私でも、きちんと兄弟として、扱ってくれるの…？
もう、ストレス発散の道具にはならない？
こんな私でも、幸せを望んでいいの？
『……や、げん。私の異常はね、きっと戦いで発揮されると思う。
だから、今は出せない。それは、今出せば、薬研を傷付けてしまうから。』
今は出せない。
傷を付けたくない。言ってしまったら、きっと＿
これ以上にないくらい、後悔してしまうから。
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雪雫(プロフ) - 三日月の本霊がきていたから、薬研と新撰組も乱の中身が人間って知っているのでは？むしろ鶴丸の方こそ人間だと知らないのでは？ (2019年12月27日 2時) (
レス) id: 48f7317aae (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - ありがとうございます！更新がんばってください！ (2018年9月29日 15時) (レス) id: 866317dc4d (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - 乱→１４５センチ 薬研→１５３センチ 寄って同じくらいではないです (2018年9月28日 21時) (レス) id: 866317dc4d (このIDを非表示/違反報告)
イケ(プロフ) - 12で三日月出てる？ (2018年9月23日 22時) (レス) id: 85ff92ecab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：赤林檎 | 作成日時：2018年9月11日 23時
