第86話【過去編】 ページ39
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物心ついた時から、家には私と姉と母しかいなかった。
お父さんとは別居状態。仲が悪いわけではなく仕事の都合で東京に住んでいる。
3人で住んでいても、生活に不自由はなかった。
お母さんがパートで夜遅くまで働いてくれているおかげである。
でも丁度中学2年生という思春期真っ只中だった私は、特に感謝を伝えることもしなかった。
心のどこかで、その生活が当たり前だと思い始めていたから。
そんなある日。
いつものように先生の話を聞かず頬杖をついていたら、突然ガラッと勢いよく開いたドア。
そして告げられたのは、"「お母さんが倒れた」“という言葉だった。
急いで向かった病院先で、お母さんが点滴に打たれているのを見た。
仕事の疲れやストレスが原因で、うつ病になってしまったお母さん。
私はぐっと唇を噛みしめて考えた。「私がやるべきこと」を。
次の日、私はお母さんの仕事先に行って、仕事を辞める、と言うことを伝えた。
そしてできることを全てやった。
いつもお母さんがやっていることをお姉ちゃんと2人で全部やった。
…………………それが、お母さんを追い詰めるなんて、思っても見なくて。
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そんな生活が始まって1ヶ月がたった頃。
『 ただいま〜…………………? 』
いつもなら和室から「おかえり」と柔らかな声が聞こえるはずなのに、今日は何も聞こえなかった。
不思議に思って早足で和室に向かう。
『 お母さん、ただい… 』
襖をカラリと開けると、そこには横たわっているお母さんの姿があった。
寝ているのか、と思ってすぐに青ざめる。
シーツに染み込む血。乾いているのかどす黒い。
腰が抜けそうになるのを奮い立たせて、深呼吸を何度もした。
慌てて運良く近くにあったスマホを手にとって緊急電話をかける。
『 あ、あのっ、母が…母が血を流して、はい、住所は…… 』
テンパりにながら住所などを伝えていくと、すぐに行く、との声が聞こえて電話が切れた。
途端にホッとしたのもつかの間、すぐさまお母さんの元に駆け寄る。
そして手を握ると、すでに冷たくて、顔も血の気がなくて。
『 おか……さ…… 』
視界が滲んでお母さんの顔がぼやける。
どうして、なんで。そんな疑問が飛び交う中、私はぎゅうっと強く彼女の手を握った。
切れた手首から流れた鮮血が私の手を汚す。
…………愛していた母親を、今日亡くした。
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あーちゃん(プロフ) - 54話、新幹線が横だったからとありますが、新幹線で、席が隣だったからと表記した方が分かりやすいのと参加した合宿全て、烏野は学校のバスで送迎されていたと思ったんですけど。 (2022年6月3日 18時) (レス) @page6 id: 16452ca9f6 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこみんと(プロフ) - あぁ、今までで一番面白かったです!!!!夢主の性格も影山の感じも全てがいい感じで、もう最っ高でした!!完結ありがとうございます!! (2021年3月31日 11時) (レス) id: c0798800c5 (このIDを非表示/違反報告)
焼き鳥(プロフ) - 完結おめでとうございますー!一部からギャグ恋愛面白かったです! (2020年10月24日 23時) (レス) id: 99af87c35a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - あああああ!!影山....カッコいい 赤葦の小説を読みたいという自分もいる...! (2020年8月30日 1時) (レス) id: c401b07093 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり。(プロフ) - ぶりっ子の作品をきっかけにぽむりんこむ様の作品にどハマりしました。。読んでて思ったんですが、主さんの赤葦くん最高すぎます(死)そして影山くん可愛過ぎます、、!私も匂い嗅ぎたいああああ、、笑いも胸きゅんもあって楽しいです!これからも頑張ってください! (2020年8月5日 11時) (レス) id: 2a1f697cc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽむりんこむ | 作成日時:2020年6月13日 17時