だいきらいしぇあはうす

眠れない夜の出来事 ページ16

「…なんだ?」



ドアを開けると、部屋の前に居たのは小柄な体格の少女。


両手で盆を持っていて、その上にはコーヒーが入ったマグカップが2つ、乗っていた。


中から立ち昇る湯気が、芳醇なカカオの香りをフワリとこちらに運んでくる。



「こ、これ…真琴さんが淹れてくれたコーヒー…。」



俯きながら、俺に向かって盆を差し出す彼女。


その手が少し震えていた。



「…ありがとう。」



怖いのに、わざわざ運んできてくれたのか…。


俺は自分のマグカップを取ると、相手をさらに怖がらせる前に部屋のドアを閉めようとする。


だけど、ドアを閉めようとしたら彼女の細い腕が伸びてきて、俺の服の袖をつかんだ。



「あ、あの…良かったら、少しだけ…一緒に話さない?」



「………は?」



相手の予想外の行動と言葉に、思わず間の抜けた声が出る。


な、なんで?…彼女は俺が怖いはず、恐怖を抱いている相手に話しかけるなんて、彼女にとっては命を捨てるくらい危険な行動だ。



「ひっ…い、嫌…だったら断って…良いから。」



わざわざ必要がない行動を、なんで彼女はするんだ…?



「…別に、嫌じゃねぇ…とりあえず部屋、入れば?」



…どうすれば良いんだ、相手の意図が全くわからない。

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