【WT】8歳、国で働く。

【EP.24】 ページ24

4107hit、お気に入り85名様ありがとうございます！
＿＿


??視点




廊下を歩いていた。



いつものように普通に歩いていた。
まさかあんなことがあるなんて思いもしなかった。





驚きと嬉しさと悲しみと自分への怒りと…………とにかく表せない感情であることは確かであった。








あの子が辛い思いをしていたのも全てわかっていたはずなのに何も声を掛けないなんて…




それがどんなに酷いことなのか…わかっていたはずなのに。








少しずつ、少しずつ、濁ってゆくあの子の目。




それでも笑うことだけは決して忘れずに日々努めてきたあの子の歪んでいくあの目。






それでも涙は流さなかった。



…






そんな、今日。

私はあの子の涙をみた。







あの子の涙なんて初めてみた。


ポタ…ポタ…と降り始めの雨のように頬に伝う流れ星を思い出す度に胸が締め付けられていく。


あの子の方が辛いはずなのに…何で私が…




どうしてあの子の傘になることが出来なかったんだろう。









でも、こんなことずっと思っていたって変わらない。

















今日、私は初めて聞いた魔法を見た。












人を傷つけない綺麗な魔法。











語られてゆく魔法の言葉。






まるで小さな赤ちゃんに語り掛けるような言葉。









太陽のようにあたたかい明るい言葉と月のようにぼんやりとしたちょっとだけ拙い言葉。








一言一言が魔法のように体に流れ混んでくる。








魔法を受けていない私でも分かるほど壮大な魔法だった。








色という空気に囲まれて目を輝かせる。
尽きることを知らない、そんな空気が漂う。



頬にも足先にも指にも煌めゆく魔法がこれほどまでに美しいと感じたことがあるだろうか。














もう二度と見れないと思っていた。


あの子の目。


きらきらとしたあの子の目。
砕けた星のように輝いたあの目と笑顔。




瞬かなくても確かに捉えた瞳に映るすべての真実。




やっと…、やっと見れたわ。
いつ振りかしら？



まるで霽月をみた気分だわ…。






そんな私は思わず涙が溢れそうになる。






視界が滲むわ…



















ごめんね、ルオラ・タハティ。
無理させちゃったわね…





そして、貴方はこの国の希望なのね………



















A・トイヴォ…。

【EP.25】→←【EP.23】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す