▶︎クリティカルヒット ページ8
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耳を疑った。
衝撃のひとことに俺は硬直してしまった。
一緒に晩酌しようって話になって、手頃な居酒屋は無いかスマホで探していた俺の手を掴んだ伊野尾ちゃんは言ったのだ。
「俺ん家で飲もうよ」
「……え」
「ほら、眠くなったら泊まればいいしさ」
……そんな軽いノリで言うけど、
本当にその意味分かってるのかなこの人。
付き合い始めのカップルが同じ屋根の下でお酒を飲むなんて……いや、俺の考えすぎなのだろうか。
0.5秒ほどで様々な煩悩が頭の中を行き交ったが、せっかく誘ってくれているのだから断る訳にもいかずに承諾をした。
何よりも恋人の家に行きたいという願望が勝ってしまったのだ。
「…それじゃあ、お邪魔しようかな」
俺の返しを聞くと嬉しそうに楽しみだな〜と微笑んでいる。
次の授業があるようで「じゃあまた後でね」と伊野尾ちゃんは食べていた唐揚げ定食のトレーを手に取って立ち上がった。
「あ、俺今日バイトだから21時過ぎになるけど大丈夫？」
「もちろん、じゃあ俺がお酒とか買っとくよ」
呑気に手を振りながら立ち去る姿を呆然と眺めながら、残りの定食を口に放り込む。
…いや、いやいやいや。
絶対にあの人特に深い事考えてない。
眠くなったら泊まればいいし、も多分言葉のまんまの意味なのだろう。
だってキスしただけで顔真っ赤にして、初々しい反応するような人だよ！？
それ以上の事するの自体あの人の頭の中にないんじゃないかな。
そうだ、そうに違いない。
残っていた味噌汁をゴクッと飲み干した辺りでその結論に至り俺も席を立ち上がった。
…一応、準備はしとくけどさ。
もしそうなった時に無かったら困るからね？？一応ね。
頭の中で言い訳をしながらバイトの前にコンビニに立ち寄った。
＊
「……お邪魔します」
「どうぞ〜」
バイト終わりに真っ直ぐ向かうと、マンションの下までご丁寧に迎えに来てくれていて、一緒に部屋に入った。
伊野尾ちゃんの部屋はシンプルな家具が多く物は少ない綺麗な部屋で彼らしいなぁと口元が緩む。
とりあえず上着を脱ぐと「どうする？先に風呂済ませる？」と、多分絶対になんも考えていないであろう伊野尾ちゃんは俺に答えを求めた。
「…そ、だね。先に入ってたが楽だからね」
「おっけ〜、お湯張ってくるね」
……俺、理性抑えられるかな。
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作者名：supika
| 作成日時：2024年2月18日 13時
