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しばらくやり取りをしていると伊野尾さんは少し緊張がほぐれたのか、ヘラッと笑ってくれて。
想像していたよりも全然ノリいいし、ツッコミとかいれてくれるし。
結構おもしろい人なのかも、と思っていた。
伊野尾さんがそろそろ行かないと、とノートパソコンをトートバッグにいれて帰り支度をはじめたから、俺も一緒にお店を出る。
お店の前で「じゃあ、また」と手を振ると、振り返してくれて、
俺ん家とは反対方向へと向かって行った伊野尾さんの背中を少しの間見送った後に、俺も歩き出した。
「あ…」
しまった、連絡先聞くの忘れたな。
しばらくした後に思い出して振り返ったけど、もちろん伊野尾さんの姿は無くて。
…いや、またすぐに会えるか。
今まで散々あの喫茶店でエンカウントしてきた訳だし。
それに、なんか約束しないで会おうとするなんて新鮮でいいかも。
次いつ会えるか分からなくてドキドキしたり、不意に会えたら嬉しくなったりするだろうか。
そんな柄にもなくロマンチックな事を考えながらの帰路は心無しか足取りが軽く、スキップしそうな勢いだった。
＊
「やっほ、伊野尾ちゃん」
「おー、やまだ。」
あれから俺たちは喫茶店で会う度に一緒飯を食ったり、お喋りしたりする仲になっていた。
伊野尾ちゃんは俺みたいに空き時間に来てるのではなくて、作業の為にここを使っているようだ、家よりも集中できるんだって。
だから、作業の邪魔しちゃ悪いなって思いつつも伊野尾ちゃんも楽しそうにしてくれているから、
…俺が、ここの喫茶店に通う理由は漫画から伊野尾ちゃんへと変わっていた。
今日はお昼ご飯を食べるつもりできたからいつもは頼まないランチメニューを頼んでみる。
伊野尾ちゃんも散々迷った挙句に全く同じものを注文した。
ハンバーグにライスとサラダとスープが付いてくるから結構お得だなぁ。
「ん〜ハンバーグ美味い」
「だね、カレーもいいけどハンバーグもいいな」
「俺もいつもカレーばっかり頼む、今度オムライスも頼んでみようかな、大ちゃんが美味しいって言ってたし」
あんまり幸せそうにハンバーグを頬張るから、ふっと声を漏らして笑ってしまうと「ん？なに？」とリスみたいな頬っぺのまま聞いてくる。
「いや？可愛いなって」
「は？」
「なんか子供みたいで」
ごくん、と口の中のものを飲み込んだ伊野尾ちゃんは「俺のがひとつ年上なんだけど…」と顔を顰めていた。
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作者名：supika
| 作成日時：2024年2月18日 13時
