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「え、大ちゃん友達なの？」
「うん、高校からのね」
俺が頼んだカレーと大ちゃんが頼んだオムライスがほぼ同タイミングにきて、会話は食事をしながらのものになった。
「いのちゃん、1か月前くらいに俺らが一緒にいる所見たみたいで、あの子行きつけの喫茶店でよく見かける、名前なんて言うの？って聞いてきたよ」
「ええ」
「だからてっきり次会う時に声掛けようとしてるんだと思ったんだけど」
いや、声かけられる素振りなんて全然、一昨日くらいもここでエンカウントしてたのに。
ていうか、あの人が俺の事認識してたのが驚きなんだけど。
俺が一方的にミステリアスな雰囲気に惹かれて、話してみたいなって思っているだけだと思ってた。
「いのちゃん結構シャイなんだな、フレンドリーな方かと思ってたけど」
「…いのちゃん、っていうの？」
「うん、伊野尾慧っていうんだ。今度会ったら話しかけてあげてよ」
オムライスを一通り食べ終えて大ちゃんは俺の読みかけの週間雑誌を横取りして読み始めたけど、その時の俺はそれどころでは無かった。
次会った時、なんて声を掛けようってそれしか頭に無かったから。
＊
大学を出て、今日はバイトも無いから家に帰ってゲームでもしようかな、なんて考えながら歩いていた。
やりかけのRPGゲームの続きが気になってたんだよね。
最近忙しくてなかなか手を出せてなかったから、今日はガッツリしたいなぁ。
と、思っていたはずなんだけど。
ふと、いつもの喫茶店を横切りそうになってから、足を止めた。
大ちゃんから伊野尾さんの話を聞いて以来、
タイミング悪くあれから彼の姿を目にすることは無くて。
結局声を掛けられずにいた。
……今日はいるのかな。
時間を潰す用事は無いのだから、寄らなくてもいいのに。
何故か引き寄せられるように俺は喫茶店のドアに手をかけた。
「…………あ」
2人がけのテーブル席にこちらに背中を向けて座っている、ふわふわの茶髪の。
………いた。
課題かなにか作業をしているようでノートパソコンを開いて画面とにらめっこしている。
よく見ると耳にワイヤレスイヤホンを付けているから俺の来店には気が付いていないようだった。
バクバクと、何故か鳴り止まない心臓の音を感じつつも俺は伊野尾さんの背中にそっと近づいた。
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作者名：supika
| 作成日時：2024年2月18日 13時
