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「…前にちょっと話した事あるかもだけど、いのちゃん高校の時に付き合っていた人にこっぴどく振られて…
それから恋愛に対して臆病になっちゃってたんだよね」
そう切り出した大ちゃんは顔を上げると眉毛を八の字にして笑って、それが優しい表情である事が見て取れた。
「………でも、山田の事を話すいのちゃんが久しぶりにすごく楽しそうだったからさ。
いのちゃん自身は告白しなくていい、このままがいいって言ってたのに勝手におせっかい焼いちゃったんだ」
テレビからはゲームに敗北した時の哀愁漂うBGMが流れっぱなしで真面目な話をしている雰囲気をまぁまぁぶち壊しているけど、
そんな事を頭の片隅で考えながらも俺は大ちゃんの言葉を噛み締めるように聞いていた。
「山田にいのちゃんのこと伝えて、話しけるように仕向けて…それが少しだけ気がかりだったんだ。
いのちゃんのこと思っての行動だったけど、本人が望んでない事勝手にしちゃったから…
……でも、よかった。
2人が喧嘩するほど仲良くなってくれて。
あの時の俺、ナイスアシストだったなぁと今しみじみ思ってるよ」
そこまで言うと積み上げられた段ボールに目をやった大ちゃんが、フッと声に出して笑う。
「…同棲始める程に長く付き合ってるんだって思うと本当に感慨深いや」
…伊野尾ちゃんの高校時代の話は大ちゃんからも軽く聞いた事があるし、本人からも聞いたことがあるものだった。
高校時代、付き合っていた人に女の子の恋人が欲しいから別れたいって理由でフラれたって。
それがトラウマになって恋愛なんてもうしたくないって思っていたらしい。
その話を聞いた時の俺は、震えて泣きそうになりながらも打ち明けてくれた伊野尾ちゃんを強く抱きしめて、絶対に離さないって決めたんだ。
…きっと大ちゃんも親友として伊野尾ちゃんの事を隣で支えてきてくれたんだな。
「…ありがとね、大ちゃん」
「何だよ、なんの礼だよ」
「んー…俺が出会う前の伊野尾ちゃんをずっと支えてきてくれてありがとう的な」
素直にそう言うと大ちゃんは鼻を擦りながら照れくさそうにする、それと同時にアイスを買いに行っていた伊野尾ちゃんが気だるげに帰ってきた。
「ただいまー」
「いのちゃんおかえり〜」
伊野尾ちゃんは帰ってくるなり俺の前にずいっとレジ袋を突き出すと中身を見るように促してくる。
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作者名：supika
| 作成日時：2024年2月18日 13時
