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耳元に口を寄せて甘噛みをすると、身体を震わせて静かに息をする伊野尾ちゃん。
顔を少しあげると目を細めてじっと見つめてくるから、もう一度唇を重ねようと近づいた。
その時、だった。
ピンポーーーン。
と、狙ったかのようなタイミングでインターホンが鳴る。
「……誰？」
「………あ」
伊野尾ちゃんの今思い出したかのような「…あ」に嫌な予感しかしない。
ジト目で見つめると案の定バツが悪そうに苦笑いを浮かべた。
「…引っ越しの片付け手伝って貰おうと思って大ちゃん呼んだの忘れてた」
「………」
「ご、ごめんて…」
はぁ…と肩を落としてため息をつく。
呼び出しといて居留守をつかうのは流石に大ちゃんが可哀想すぎるから、しぶしぶと伊野尾ちゃんの上から退いて玄関へと向かった。
ガチャっとドアを開けると俺の心情なんて全く知らずに「山田ー！手伝いに来てやったぞー」と呑気に笑っている大ちゃん。
「…ありがとね」
「…？なんかテンション低くね？」
それからお茶を出して３人で少しお喋りした後に片付け再開。
大ちゃんは俺が持ってきた何台かのゲーム機の配線してくれると言うので任せると、動作確認と称してそのままゲームをし始めてまじで何の役にも立たなかった。
伊野尾ちゃんがアイス食べたいと言い出してふらっとコンビニに出かけて行ったタイミングで俺も小休憩を挟もうと思ってソファに腰を下ろし、ゲーム画面を後ろから覗く。
「大ちゃん、ちゃんとガード固めないと、攻撃食らってる」
「ちょ、あっ、あぁ〜もう負けた！」
ちくしょう〜と子どもみたいに悔しがりながらコントローラーをぽんとカーペットの上に置いた大ちゃんは、敗北したゲーム画面から俺の方に顔を向けるとヘラっと笑った。
「しかし、もう１年か、早いね」
１年、というのは俺と伊野尾ちゃんが付き合っている期間の事だ。
本当に早い、あの喫茶店での出逢いからそんなに経ったなんて実感わかないな。
「あの時のいのちゃんいっつも山田山田ってうるさかったな〜
そんなに好きなら告白したら？って言ったらめっちゃ顔赤くして、無理だよ！って」
「伊野尾ちゃんにもそんなピュアな時代があったね…」
「ね！あの時は本当に初々しかったなぁ」
大ちゃんは懐かしそうに思い出話をしながら、少し伏し目がちになる。
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作者名：supika
| 作成日時：2024年2月18日 13時
