▶︎エンディング ページ1
きっかけは些細なことだった。
大学でたまたま女の子と歩いている所を伊野尾ちゃんに見られたのだ。
もちろん浮気なんかじゃない、たまたま声を掛けられて隣を歩いていただけだし、向こうが俺に気があるかも分かんないのに過剰に反応するのも変だし。
んで、家に帰ってきたら案の定不機嫌でさ、伊野尾ちゃん。
女の子の前でデレデレしてただの、俺と話してる時よりも楽しそうだっただの、本当にしつこくて。
そんな訳あるはずがない、俺が好きなのは伊野尾ちゃんなんだから。
2年も付き合ってるし、同棲だってしてるじゃん。
それなのにグチグチといつまでもいうから気が付けば「うるさいなぁ…」なんて思わず漏れてしまって。
ソファに膝を抱えて座り込んでいた伊野尾ちゃんは「は？」と目を見開いた。
「え、何なのお前」
「さっきから違うって言ってるのになんで信じてくれないの？」
「…なんで逆ギレされないといけないわけ？」
こうして俺たちの口論は始まった。
お互い関係ない過去の不満まで掘り起こしてきて、一体どれほどの時間声を上げあっていたのだろう。
ついに伊野尾ちゃんはソファから立ち上がると、カーペットの上に膝を立てて座っていた俺の事を見下ろしながら言った。
「もう、別れる」
本心では無い事は分かっていた。
伊野尾ちゃんは素直になれない所がある。
喧嘩がヒートアップしすぎてムキになって言ってしまったのだろう。
でも、そんな簡単に別れるだなんて言える事にどうしようもなくイラついて「あっそ、勝手にしろよ」なんて、俺も本心では無い事を吐いてしまって、
伊野尾ちゃんはキッと俺の事を睨みつけると、バタバタと音を立てて部屋を出ていき数秒後には玄関のドアを乱暴に閉める音が聞こえた。
……大ちゃんの家にでも避難するんだろう。
騒がしかった部屋が急にしん…と静まり返って、思わずため息を漏らしながら俯く。
あーあ、やってしまった…。
ついつい言い返してしまった。
さっきまで伊野尾ちゃんが座っていたソファに倒れるように背中を預けて、天井をボケーッと眺める。
こんな大袈裟な喧嘩するのは実は初めてかもしれない。
確かに俺たち、お互い口悪いし喧嘩なんて頻繁にしているのだけど。
「別れ話」にまで、話が発展するのは初めてだった。
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作者名：supika
| 作成日時：2024年2月18日 13時
