ツンデレーションギャップ tk*in

＊＊＊ ページ40

一次会が終わり、薮くんに引き止められたけど用事があると言い張って光の速さで帰宅する。

なるべく早く帰ってきたけどなんだかんだでもうすぐ日付が変わるくらいの時間になってしまった。

…伊野尾くん、もう寝ちゃったかな。


もし寝てたら悪いなと思い寝室のドアをそっと開けると、
案の定すやすやと寝息を立てて布団にくるまっている背中が見えた。

顔を見たかったから回りこんで起こさないようにのぞき込む。


「……伊野尾くん、ただいま」


返事は帰ってこなかったけど、お酒を少々飲んでいるからか話したい気分で、伊野尾くんの頭を撫でながら少しお喋り。



「遅くなっちゃた、ごめんね。本当はもう少し早く帰ってきたかったんだけど…」


「……明日の休み、何しようか、伊野尾くんのしたいことしよ」



しばらく独り言を言ってるとうるさかったからか、伊野尾くんは眉をひそめて唸り声をあげた。
起こしちゃったと慌てる反面、少し嬉しかったりもする。



「んー…たかき…」

「伊野尾くん、ただいま」

「遅い…」

「ごめん」


夢と現実の狭間をふらふらしてる様子の伊野尾くんは目を閉じながら、ごにょごにょ話して、そんな姿がたまらなく可愛かった。

うん、やっぱり今日話したどの子よりも俺にとっては伊野尾くんが１番可愛い。



「待ってた…のに、遅いから、も、眠い…」

「うん、寝ていいよ。伊野尾くんの声聞けたから満足」

「……や、叩きおこして…」

「いーよ！そんな！おやすみ」


必死に起きようとする伊野尾くんをベットに戻してしばらく頭を撫でると、大人しくまた寝始めて…なんだか子どもみたいで笑ってしまった。

ちゅっと頬にキスをしてそっと寝室を出る。


とりあえず酒やらタバコやらの匂いが染み込んだスーツを脱ぎ捨てて、風呂へと向かった。








寝る支度を済ませて再び寝室に戻るとさっきと全く同じ体勢で寝ていた伊野尾くん。
隣に寝っ転がって後ろからそっと抱きしめた。

足を絡めて体をくっつけるとあったかくて、子ども体温だなあ〜なんて、

そんな事を思っていると腕の中でもぞもぞと伊野尾くんが動き出す。


ぐるんと体をこっちへと向けて、相変わらず眠そうに僅かに開いた瞳で俺の事を見つめてきた。



「たかきぃ…明日」

「ん？」

「明日、デート、したい…」



伊野尾くんは俺の独り言をちゃんと聞いていてくれていたようだ。

＊＊＊→←＊＊＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す