畢生探偵事務所〜人生のさがしもの、見つけます〜【 utit 】 (ページ2)

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月のピアスを着けた青年視点

「まず、此処に来る前までのことは覚えていますか？」

「 … 分かりません。」

「あらら … まあ、普通はそうですよねぇ」

目の前の白髪の青年はそう呟き、何処かの本棚から本を抜き取り僕の座っている場所の前に差し出してくる。
… これは … なんだろうか。そう思って手に取ってみると流れ込んでくる数々の記憶たち。

突然の事に驚いて思わず手を離してしまう。すると不思議なことに手から離れてしまった本は地面に落ちることなく、その場に漂っていた。

「まあ最初は驚きますよね … とりあえずその本をテキトウに開いてください。そうしたら勝手にさがしものに関するページで止まりますから。」

「 … あの、さっきからさがしものって言ってますけど、何ですか？それ。」

「あれ、教えてませんでしたっけ？」

“ それじゃあ少しだけ説明を ” だなんて前置きをし、彼は話し始めた。

要約すると、さがしものとはその人の人生における大切なもの。それは “ 探し物 ” なのか “ 捜し物 ” なのかは分からない。また、その “ さがしもの ” が物なのか者なのか、はたまたモノなのかすらも分からない。だがそれを見つけなければ亡くなっている場合は成仏出来ないし、生きている場合は現世に帰還出来ない。そしてさがしものは見つけた瞬間、本人が直感的に分かる。

… 要するに俺は今からその人生のさがしもの、とやらを見つけなければ生きてるのか死んでいるのかすらも分からない。だからさがしものを見つけなければいけないらしい。

中々に面倒なことになったな、だなんて自分のことなのにそう思ってしまう俺は、この状況をどこか他人事のように思っているのだろう。

とりあえず本を開けなければさがしものは見つからない。しかしまたあの感覚がするのだろうか、なんて思って少し怖くなり、まふくん──彼がそう呼んでと言っていた──に開けてもらおうと思ったのだが …

「その本は貴方の人生の本。だから貴方にしかその本は開けないんですよ。」

なんて言われてしまい、俺は意を決して本を手に取りページをテキトウに開く。するとどういう原理なのか勝手にページが捲られていき、とあるページに辿り着くとピタリと紙が捲られる音が止む。

俺の人生のどこ辺りなのか知るために、文を少しだけ本を読んでみることにした。