痛くない ページ24
「…そうだったのか…。」
「はい。
まぁ七歳の時のことですから、今更気にしてはいませんが。」
そう、気にしていない。慣れた。
『親のことについて訊かれることには』もう慣れたから。だから、痛くない。
もう痛くない、はずなんだ。
自分に暗示をかけるように、心の中でそう呟いた。
誰も発言できないまましんと静まり返った空気を壊したのは、マチさんだった。
「月川。その…、悪かったね。
初対面でファーストネームとか無遠慮に訊いちまって…。」
何でマチさんが謝るの…?
「謝らないで下さい。
先ほどのことは、完全に私が悪かったんです。
ファーストネームが気になるのは仕方がないことなのに、あんな言い方をして…。
本当に申し訳ありませんでした。」
後悔しかない。
ファーストネームを訊かれた焦りからとはいえ、どうして私はこんな気の使えるひとにあんな言い方をしてしまったんだ…。
頭を下げたまま上げられない私に、マチさんは慌てたような声を出した。
「いや、だからあれはアタシのせいで…!」
「いえ、私が悪いです。」
「でも…!」
そこで、若干空気になっていたクロロさんが声を出した。
「お前ら、そのまま続けたら日暮れまで言い合うことになるぞ。」
「「…。」」
このあと、お互いに後日お詫びをしたいということで連絡先を交換しました。
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作者名:雪染めの蝶 | 作成日時:2019年6月2日 23時