ここは？ ページ3
…？
「こ、こは…？」
「流！起きたんだね！」
…。
「申し訳ありません。どちら様ですか？」
「！？」
なんで私はこんなところにいるんだろう。
誘拐…ではないのかもしれない。何か私が起きたことにほっとしているようだったし。
…まぁ、なんだっていいや。
「ごめんアロ。記憶だけをうまく消すのは無理だった」
「…え？」
記憶を消す？
いや、消せなかった？
どういうことなんだろう。
「こんにちは流ちゃん。僕はツルギ、一応前の神様だよ。
実は色々あって1年くらい君の記憶を消さなきゃいけなくなってね〜」
そこは省略てはいけない場所では。
「で、本当は君の好きな人についての一切の記憶を消す予定だったんだけど、そうすると7歳からの全部の記憶が消える感じになってたんだよね。
ほぼ毎日24時間その人のことを考えてたみたい☆」
…いまいち飲み込めないけど、24時間考えてるって…。
「まぁそれはとにかく、そんなこんなで今の君は彼女の中の可能性の1つだよ。
実際には記憶だけ消したら『もしもあの人と出会わなかったら』っていう性格になる予定だったんだけど、可能性だからそれだけじゃなくて君には『過去』もちゃんとあるんだよね〜」
…つまり私は『月川 流』の偽物のようなもので、
彼女が彼女の想い人と出会わなかったら、という可能性が実体化したような物なのだろう。
…今までの記憶が、全て偽物？…まぁ、いっか。
楽しい人生だった訳じゃない。誰も頼れず、ずっと一人で生きてきた。
だから自分の人生なんて、惜しむ価値のあるものじゃなかった。
「そうですか。では、記憶＿＿というか『月川 流』が戻る時には私はどうなるのでしょうか」
そう訊くと、ツルギさんは少し驚いたような顔をした。
「…驚かないんだね。いや、違うか…。ショックじゃ、ないんだね」
「はい、傷つくのは無意味です。特に価値もない過去ですから」
さっきアロって呼ばれてたあの男の人、なんで少し悲しそうなんだろう。
悲しむ要素なんてなかった…よね？
「質問に答えていなかったね。
はっきり言うと今の正しい『月川 流』に統合されて、消えるよ。記憶は継承されるけどね」
記憶が受け継がれるのは驚いたけど、大方予想通りかな。
「そうですか。では、私はこれからどうすればよろしいですか？」
さすがにいつも通りは『いつも』がわからないから出来ないだろうし。
家にいればいいのかな。
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作者名：雪染めの蝶 | 作成日時：2019年6月2日 23時
