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「ごめん一ついい？」
『無理』
「まじで一つだけだから！」
食堂でカレーを食べていると、正面でうどんを食べているきなこからそう言われた。きなこがこう言う時は面倒臭い時だ。だから断る、と言うがヤツも諦めが悪い。
「いやまじでさ…」
『いいよって言ってないけど』
「ウォッカさんと付き合ったりはしてないよね？」
『……はぁ？』
「どうなん、そこは」
カレーを吹き出しそうになった。大変よくない。米が変なところに入り咳き込んでしまう。いきなり何てことを訊くんだお前は。水を一気に飲み干し、息を整え口を開く。
『なに、言ってんの？』
「いや、……うん、なんとなく？」
『アホか。ウォッカ先輩はそんなんじゃないよ。あーあぶね、まじで吹くところだった…』
「……本当にぃ？」
『あんた本当になに？』
怪しい、と言わんばかりに私を凝視する。そんなに疑っても何も出ない。嘘は言ってないんだ。同じ委員で体育祭が近づいているから一緒にいることが多いというだけだ。
何故そんなに疑われるんだ。ぼっちになるからと言って、流石によくはない。
『早く彼女作れよ』
「いやAに言われたくないんだけど？？」
『私はいいんだよ私は』
「随分と自信と余裕があるね？」
『まあね』
ないと言っても等しいくらい、好感度が上がらないから打ちのめされているが。自信も余裕もクソもない。いやクソしかない。
『三十、いや三十五過ぎても独身だったらお見合いでも何でもやるよ』
「……すぐ嫁の貰い手現れそうだけどなぁ」
『人生はまだまだだねぇ』
すっかり冷めてしまったカレーを口に運ぶ。今度は、幸せになるんだ。きなこから不思議な視線を浴びている気がするが、気のせいだと信じカレーに視線を落とす。
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作者名：ゴマ
| 作成日時：2023年2月26日 21時
