合わない2 ページ37
内田にはやっぱりバレた。
内田は芙希をよく見ている。
内田の目をごまかそうとするならハリウッド女優なみの演技力が必要だ。
芙希のへったくそな芝居がバレないはずがなかった。
芙希は手に持った玉ねぎを、しょんぼりと冷蔵庫に戻した。
話を聞き出して、内田は一瞬かっとした。
(あのやろうっ!!よくも芙希を泣かせて・・!!)
妻を侮辱された気がして頭に血がのぼった。
「まだどうしても私の感覚が鈍いのよ・・・間抜けで、甘いの」
「・・・・・・」
鋭く尖りきって感電しそうなほどの芙希は、とうから見ていない。
一生懸命育児をして、その合間に一生懸命練習している今の状態で、宮下のように研ぎ澄まされたトップレベルの感覚においそれとついていけるわけがなかった。
顔に朱を走らせて怒りに燃えた内田だったが、しかし次にわかったのは、宮下はあきらめていないということだった。
まだ芙希をパートナーにする気でいる。
復活を、大いに待ち望んでいる。
憐れんでも見切ってもいない。
信じているのだ!
「・・・芙希は、ほんとうに宮下に期待されているんだね」
内田は芙希の肩をポンポンした。
「庭でモーリンと子どもたち遊んでるよ。おままごと!
俺、泥のシチュー食べさせられそうになった(笑)」
「(笑)きょうはシチューにするわ!本物の、おいしいシチューね!」
よろよろっとした芙希の心は何とか立ち直った。
もう一度玉ねぎを冷蔵庫から取り出した。
64人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏葉 | 作成日時:2015年1月30日 13時