饗宴 5 (ページ34)

今日:5 hit、昨日:8 hit、合計:48,203 hit

家族写真ページ34

「芙希、子どもたちを迎えに家に戻ろう。そして今日は家族写真を撮りに行くんだ！」

「え？」

「俺たち、なんも記念写真持ってないだろ？(結婚式さえやってないんだから。)

きょうはすごくいい記念になると思うんだ。

服はそのままでいいよ。

子どもたちと、モーリンと、5人で撮ろう！」

形式ばらない、とても自然な雰囲気の愛に満ちた一家の写真は、のちにピアノの上に飾られることになった。

小さくても芙希が第一歩を踏み出した記念だった。

桜子が「あーっ♪」と言う声が聞こえてきそうな大きな口で笑っている。

悠理海はちょっと違うところを見て何かを指差している。

後ろに立った内田は芙希の肩に手を回し、芙希の隣にモーリンが座り、みんな幸福に輝いていた。

モーリンが4人でも撮ったらというのでまた撮り、モーリンと子どもたちの3人でも撮った。

そして、夫婦だけでも撮った。

二人できちんと写真を撮るのは初めてだった。

写真館を出てモーリンと別れ、今度はデュッセルドルフの日本レストランに行った。

内田がこっそり予約していたのだ。

「芙希の手料理にはかなわないけどね(笑)」

「すごく楽しみだわ！外食なんて、ほんとに長いことしてないわ！キャー♪」

「今日は芙希のお祝いだから(笑)二度目のデビュー戦、勝利おめでとう！」

内田らしい言い方だった。

「ありがとう～～(笑)

モーリンにも何かプレゼントを買っていきましょうよ。彼女が子どもを見てくれたから練習できたんだから。

もちろん、あなたのおかげですけれども！(笑)」

芙希はこんな贅沢な外食はほんっとに久々だと思った。

お料理はとても良かった。

芙希はあとで材料や調理法を聞いて、自分でも作ってみたいと思った。

お店の人は子供用に爪楊枝にちっちゃい旗をつけてうずら卵に刺してくれた。

青地にSの白文字が抜いてある。

デザートにも飾りをつけてくれた。

たぶん、ロバだと思う。

ちょっとくずれていたが、ロバっぽかった。

芙希は大笑いして写メを撮っていた。

子どもたちもすっかり喜んでキャーキャー言っていた。

みんな良く食べたし、心配したけど子どもたちもまあまあ行儀良かったし、後片付けはしなくていいし、

天国みたいだと芙希は思った。

実際そう言った。

内田は、芙希がそれほど言うならまた連れて来ようと思った。