マンガ ページ3
芙希の気も知らず、内田はわくわくしながら芙希の寝ている病院のベッドにかがみこんでいた。
「芙希、俺ね、今度新米パパ講習に通うよ。ヘバメが勧めてくれたんだ。
赤ちゃんのこと一通り全部教えてくれるんだって。なんか、すごく楽しみになってきた！」
青ざめた芙希がゆっくり向き直った。
「俺たちの赤ちゃん、急に二人も来てくれるって、びっくりしたけどほんと嬉しいよね！」
内田は抑えきれずクククっと笑い声を漏らした。
「せっせとパパになる練習して待ってるから、ね、芙希も大事にして」
隈ができていた芙希の眼もとが急にゆるんだ。
それを見て内田は、芙希の第一の不安の種はほかでもない、自分にあったんだと気が付いた。
病院にかけこんだら思いがけずにおめでたで、しかも双子妊娠を医師に告げられた。
内田はほとんど腰が抜けて絶句していたが、芙希は落ち着いたものだった。
いつか来る日が、ついに来た、待ち焦がれていたというようににっこりとほほ笑んだ。
しかし1ヶ月の安静と入院を勧められると、とたんに不安にかられたように怒りっぽくなったのだ。
「1ヶ月も、何もしてあげられないわ。わたし、寝たきりよ。あなた一人で大丈夫？」
「うん。俺、芙希に甘えてばかりいた。・・・これからは、ちゃんとやるよ！
やればできるんだ俺！」
「・・・申し訳ないわ」
芙希がぽろっと涙を零した。
内田の世話ができないのが、残念で悔しかった。
芙希はいつか赤ちゃんができたら、ゆっくりと二人で見守りながら、だんだん大きくなるお腹をいとおしみながら、心優しい生活を送りながら、平和にその日を迎えるのが夢だったのだ。
今の状態ではそれどころか、もっと長期の入院になるかもしれない。
内田にも不自由を覚悟してもらわなくてはならない。
芙希は何も言わずに内田に一冊のノートを渡した。
(あ、これがいわゆる『家事ノート』ってやつだな・・・)
内田は思わず顔をしかめそうになったが、中を開いて笑い出した。
内田が躓きそうなところが全部マンガで示されていた。
いつの間にこんなの作ったんだ。
芙希ってこんなにマンガ描くのうまかったっけ？
こいつは傑作だ！(笑)(笑)
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作者名：夏葉 | 作成日時：2015年1月30日 13時
