レセプション2 ページ15
「ね、あれ着て見せて？せっかく買ったのに、まだ着てないでしょ？」
内田は前に買っておいたドレッシングガウンをクローゼットから取ってきた。
濃いワインカラーですべすべして光るような生地の、美しいガウンだった。
内田が街で見つけ、『芙希に似合いそう♪』と珍しく買ってきたものだった。
ずいぶん派手だと思ったが、内田が「着て見せてくれなきゃ立ち直れない！」と言い張るので、芙希は笑いながら初めて羽織ってみた。
「どう？」
振り返ったとたん内田は部屋の灯りを消し、フットライトだけにした。
闇の中、下からのほの暗いライトに浮かび上がったガウンは燃えるような紅色に映え、芙希の肌は薔薇色に染まっていた。
内田は息をのみ、しばらく見つめてからするっとガウンのベルトを解いた。
そしてガウンを肩から滑り落とした。
「せっかく着たのに」
「綺麗なものが見たいんだ・・・」
内田は芙希をベッドのふちに腰かけさせた。
同じ生地の下のスリップも、すぐに滑り落としてしまった。
スリップは腰のあたりに巻きついて芙希は人魚みたいだった。
内田は床に膝をつき、下から見上げるような格好になっている。
「うわ・・素晴らしい胸だ・・・」
内田は目をまん丸くしていた。絶賛のまなざしだった。
「ちょっと、ちょっと！・・・あなたってば変態的よ・・・」
芙希は恥ずかしくなり、急いでガウンを羽織り直しながら傍のベビーベッドを見た。
あてにならない赤ちゃんたちは、こういう時にはぐっすり眠っている。
「うん、いい子だな！・・泣くなよ？・・・もともと芙希は俺のなんだからね♪♪」
内田はベビーベッドの方を見てにんまりした。
芙希のお腹には、きりりと1本の手術跡があった。
(雪花石膏の彫像のようだったのに)
惜しいな、というより、赤ちゃんの安全のためにあえて帝王切開を選んだ芙希の、勇気と愛情の象徴に思えた。
あとあともかなり痛んだようだった。
(自分の身体に傷跡を残してまで、産んでくれたんだ)
内田は芙希にそうっとそうっと触れた。
「ああ芙希！ありがとう！ほんとうにきれいだよ！」
芙希といっしょにこんなに長く続けて生活したのは、実は結婚以来初めてかもしれない。
芙希の演奏活動も多く、自分も試合の前泊遠征合宿等あって、けっこうすれ違っていた。
また、産前の入院期間も長かった。
(幸せだ・・・)
内田は芙希の温かい身体を抱きしめた。
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作者名：夏葉 | 作成日時：2015年1月30日 13時
