レセプション ページ14
どうしても夫婦で出席しなければならない、クラブの記念レセプションがあった。
今夜はレセプションから帰るまでモーリンが時間延長して子どもたちを見ていてくれる。
芙希は久しぶりに盛装して、内田に背中のジッパーをあげてもらっていた。
「芙希・・・でかっ・・・!」内田が目を丸くしている。
何を感心しているのかと思ったら、たしかに信じられないほど立派なバストになっていた。
・・・ジッパーが上がらない!
芙希は焦って急きょ着物に着替えた。
(着物を着るのは、真梨香とビラ配りして以来だわ)
もう、遠い遠い昔のことのように懐かしかった。
モーリンが着物を素晴らしいと褒めてくれた。
芙希は出かける寸前になって不安にかられた。
ああやっぱり子どもたちが心配だわ!何かあったらどうしよう!
モーリンは笑って言った。
「大丈夫ですよ。泣いてちゃそこで待ってる素敵なご主人が困ってしまいますよ。
大丈夫だから行ってらっしゃい」
レセプションでは肩や腕や、大胆に背中を出したドレスの女性もいた。
それでも、ほとんど肌を見せないキモノ姿の芙希ほど目立った人はいなかった。
民族衣装は目立つし、似合うものだが、わずかに襟足を抜いただけの清楚な色気。
格調高い白磁のようにすべすべした芙希の肌に、遠目にはわからなくても近寄ってそれを認めた人は離れなかった。
内田はすましていたが、内心すごく自慢だった。
芙希は笑顔を見せていたが実はそれどころではなかった。
レセプションはほんの2時間程の予定だったのだが延びてしまい、まだ授乳期だった芙希は胸が張って痛くてたまらなかったのだ。
搾乳していけばよかったと後悔したが、後の祭りだった。
帰宅した途端、着物を脱ぎ捨て、赤ちゃんに含ませながらぜいぜい息をついていた。
「そんなに痛かったの?」
「痛いわよ〜!ええとね、たとえればレゴブロックの塊を胸で踏んだような」
想像して内田はぞっとした。(いや、それは痛すぎるだろ!)
「途中で俺が吸ってあげたのに」
「パパは下手だからだめよ」
にべもなく断られて、内田は傷ついた。
「あ、いや、ほら、(笑)着物なんだから。・・・そんなにしょげないでよ(笑)」
「いや、しょげるね。今のは絶対しょげる。俺、立ち直れないかもよ?」
気がつけば内田は芙希の腰に腕を回していた。
「え・・?」
目をきらきらさせて内田は微笑んでいた。
(な、何をたくらんでいるのよ・・?)
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作者名:夏葉 | 作成日時:2015年1月30日 13時