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新居 ページ1

新しい内田家に、旧い友人知人を一通りお招きして、お披露目もようやく済んだ頃だった。

引っ越しても、やっぱり食べにくる日本人選手はたくさんいた(笑)。

生活も落ち着き、新しいご近所ともお近づきになっていた。


芙希は真梨香のところに遊びに行った際に、イギリスの紅茶の美味しさに目覚めていた。

結局イギリス旅行で買ったものは、Fortnum&Masonの紅茶だけだった。

新しいご近所にはケーキを焼いてそのお茶をふるまったりした。

今となってはルイスちゃんが懐かしく、散歩に来ないかしらと思ったりもした。

ルイスちゃん家のご夫婦とは涙の別れをしてきたが、お近くですものまた遊びに来なさいねと言われて嬉しかった。



新しい家に慣れるに従ってそのいいところを芙希も認めざるを得なかった。

小高い場所にある家で、大きな窓がたくさんついており、どの窓からの眺めとも芙希は仲良しになっていた。



やはり家の中にピアノがある素晴らしさ、気がねなく弾き鳴らせる喜びは代えがたかった。

内田が決心してくれて、クラブが了承してくれて、ここに住めて良かったと思った。


内田はベーゼンの響きがうるわしいのに感激して、せっせと芙希にリクエストした。

しっかり聴き入ったり、静かな曲をBGM風に聴いたり、聴きながらうたたねしたり、先輩に言わせると『許し難いほどめっちゃ贅沢な』楽しみ方をしていた。

また、芙希は芙希でいろいろ聴いてもらいたくてレパートリーを広げるのだった。



本日の練習もしっかりして、ご飯作りにかかった。

お料理は大好きだ。気分転換にもなる。

暇な時には、芙希は玉ねぎを延々と刻む。

刻んでは飴色になるまで炒め、冷凍しておく。

これがあとあと便利なのだ・・・



内田といっしょにゆっくり平和にご飯を済ませた。


芙希が予言したとおり、内田はたちまち新しい家の大きなソファをお気に入りにしていた。

皿洗いしながらふと内田を見ると、やっぱりソファにいつものポーズで寝そべっていた。



(まるで猫ちゃんみたい。髪の毛も猫耳だわ(笑)

この人はどこでもこうやって寝られるに違いない。

バッキンガム宮殿だろうと大聖堂だろうと、ソファがあれば(笑)(笑))



結局内田がいれば、内田さえいてくれれば、そこが芙希の宮殿なのだ・・・



心から満ち足りて芙希は微笑んだ。

コーヒーを出そうとして手を伸ばした時、突然くらくらっとめまいがした。

カップが手から落ちて割れ、芙希は崩れ折れた。

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作者名:夏葉 | 作成日時:2015年1月30日 13時

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