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初めて彼の怖い一面を見たようで困惑し、動けなかった。
「性格悪い考えだけどこれしか思いつかないんだよな」
そっと私を離し静かに座る。
恋愛未経験の私には彼の気持ちはわからない。
好きな人を傷つけてまで手に入れたいなんて、付き合えたらラッキー程度にしか感じない私には理解できない。
けど、彼の必死さはよく伝わっている。
私に弱音を吐いてしまうほどに、狼な一面を見せつけてしまうほどに、彼には余裕が無い。
「そもそも、こんな女装野郎を受け入れてくれるかな?」
へにゃっと今までにないくらい弱気な笑みを浮かべる。
そんなことない、君なら出来る。だって君には私には無いものたくさん持ってるんだから。
「よ、弱気にならないでよ!こっちまで不安になってくる」
馬鹿みたいに感情的に、彼にだけ届くように叫ぶ。
ごめんと謝ってくる彼を見るのが辛い。
「優大くんは最近“マシロちゃん”が足りないよ。格好だけマシロちゃんになって、中身は優大くんのままでさ、余裕がなくなってきてるよ!」
近くの席に座るお客さん達が見てるのがわかる。
下手したらまた叔母さんに怒られる。
それがどうした。
今するべきことは周りの目を気にして彼への言葉をやめることじゃない。
感情的になってるからこそ、言えることがあるんだ。
「みっちゃんは私たちみたいに受け入れてくれるかわからないよ。けど優大くん言ってたじゃん、バレないのが楽しいって。もう一層のことみっちゃん騙しちゃおうよ」
弱気な彼なんて見てたくない。弱気な部分なんて私にだってある。
「もしバレたらそのくらい彼女が君のことを見てるってことだし、もしそれで引かれたらその程度の女だったんだよ。別れちゃえ、そんな器の小さな女捨てちゃえ!」
彼にだけ届くように叫んでいたはずが、気づけば周りにも聞こえていてみんなの視線が私に集まっている。
久しぶりにこんなに感情的になった。それをいろんな人に見られるなんて恥ずかしすぎる。
「ごめんなさい、叫びすぎました」
お客さん達にも彼にも謝る。
けどみんなどこか笑顔で嫌な顔をしてる人なんていなかった。
数秒おいて常連客のおじさんが「かっこいいね、青春だね」と言ってきた。
それに続けて周りのお客さんも「かっこいい」と言ってくる。
また彼も、あははと清々しい笑顔を浮かべ「かっこいい」と言ってきた。
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袋(プロフ) - 今日読み始めた者です。 本音を言うとですね、最高。すこ。めちゃくちゃドキドキする。ウッヒョーォオオォオオォオオォオオォオオ!って感じです。語彙力なくてすみません!!!! (2020年1月27日 22時) (レス) id: b33350b182 (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 岩舘くんの下の名前は吏音です。李音とよく間違えます。間違ってたらぜひ遠慮なく言ってください (2018年4月30日 10時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 子月さん» ここまで言われたのは初めてです。ありがとうございます!文章上手に書けるよう頑張りますね (2018年4月24日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
子月(プロフ) - 甘さもあるけど少し暗い面もあって……私好みの物語です。占ツクのオリジナルだと中々見つからなかったので、この作品を見つけた時、嬉しかったです。続きを楽しみにしていますね! (2018年4月24日 19時) (レス) id: be8a18df5d (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 和花さん» ありがとうございます! (2018年4月5日 13時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
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