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二人が席を立ったあとも考えていた私を現実に引き戻すかのように、山本くんが名前を呼ぶ。
「宮田」
「なに?」
彼と目を合わせると、少し眉間にシワがよっているが幼い子どもを見るように心配そうな顔をしていた。
「何かあったのか?」
正直誰かにどうしたらいいのか訊きたい。
けど、彼にこのことを話してはいけない。
話したら当てつけになって彼を傷つけてしまう。
「大丈夫」
咄嗟に選んだ言葉が間違っていたんだろう。
彼の眉間のシワはより深くなり、寂しそうな表情に変わる。
「愚痴でも当てつけでもいいから話してほしい」
きっと、話しても話さなくても彼を傷つけることになるのだろう。
そう思って、私は悩んでいたことを彼に話した。
ハナが優大くんのことを好きだと前から知っていたのに、私は優大くんの恋を応援したこと。
けど、優大くんの好きな人であるみっちゃんには他に好きな人がいること。
みんなの名前を伏せて説明しているととてもややこいことになって、誰が誰なのか分からなくなってくる。
ごめんと謝れば彼は表情一つ変えずに話を続けるよう言ってくれた。
続けて、みっちゃんの好きな人は元カレであるということを優大くんから聞いていたこと。
だから私はみっちゃんから話を聞くまでそう信じていたこと。
でも本当はみっちゃんは岩舘くんのことが好きで、優大くんもそのことを知っていたこと。
優大くんがついた嘘は私のためだったということ。
名前は伏せているものの、悩んでいることを包み隠さず全て彼に話した。
「色々ややこしいな」
「うん、ごめんね」
二人してドリンクを飲む。
すっと顔を上げた彼につられて私も顔を上げると、眉間のシワは薄くなりまっすぐな表情で彼は私を見つめていた。
「宮田が悩んでいるのは、その男友だちの恋をどうしたらいいのかってことだけか?」
「え……」
「話聞いてて思ったんだけど、その男友だちの恋沙汰の中に宮田の好きな人も関わってるんじゃないか?」
図星だ。
「でももしそうだとしたら、この話は君への当てつけになっちゃうよ?」
動揺と罪悪感から自然と彼から目を逸らしてしまう。
それとは裏腹に、彼の声はまっすぐだった。
「それでもいい。愚痴でも当てつけでもいいから話せって言ったのは俺だ」
初めてかもしれない、彼を男らしいと感じたのは。
なんの迷いもない、ただ教えてほしいと訴えるようなまっすぐな瞳に負け、私はごめんと謝った。
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袋(プロフ) - 今日読み始めた者です。 本音を言うとですね、最高。すこ。めちゃくちゃドキドキする。ウッヒョーォオオォオオォオオォオオォオオ!って感じです。語彙力なくてすみません!!!! (2020年1月27日 22時) (レス) id: b33350b182 (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 岩舘くんの下の名前は吏音です。李音とよく間違えます。間違ってたらぜひ遠慮なく言ってください (2018年4月30日 10時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 子月さん» ここまで言われたのは初めてです。ありがとうございます!文章上手に書けるよう頑張りますね (2018年4月24日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
子月(プロフ) - 甘さもあるけど少し暗い面もあって……私好みの物語です。占ツクのオリジナルだと中々見つからなかったので、この作品を見つけた時、嬉しかったです。続きを楽しみにしていますね! (2018年4月24日 19時) (レス) id: be8a18df5d (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 和花さん» ありがとうございます! (2018年4月5日 13時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
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