23 ページ23
.
「いつついたんだろう。ちょっとトイレ行って鏡見てくるね」
今のでリップが取れてないか気になる。
こっそりリップクリームを手に持ち席を立つ。
そんな心配よりも彼の手が自分の唇に触れた方がよっぽど心臓に悪く、トイレに入り誰もいないことを確認すると大きくため息を吐く。
あんなにドキドキしたのは初めてだ。
リップよりも彼の目に映った私がおかしくなかったという心配の方が大きい。
鏡を見ると私の頬はほんのり紅く染まり、予想通りリップは少し取れていた。
優大くんにしてもらったように唇を整え少し気持ちを落ち着かせ行こうとするとみっちゃんがやってきた。
「あ、いたいた。良かった。遅いから帰っちゃったのか心配してたの」
「えっごめん。すぐ行くね」
「ううん、どうせだからちょっと二人で話そう」
笑顔を崩さず彼女は洗面台に手をつき寄りかかる。
「生クリーム、絶対私が食べさせたときだよね。ごめんね」
「ううん、全然大丈夫だよ!」
「うふふ、ありがと」
いつもとは少し違う笑い方をし、彼女は少し寂しそうな顔で下を向く。
明らかに様子がおかしい。
「みっちゃん、大丈夫?どこか具合悪い?」
心配して近寄ると彼女は少し驚いたような顔で一度こちらを見て、いや……と迷いを見せる。
これは完全に具合が悪い方ではない。
「いいよ、なんでも言って」
彼女は少し顔を上げ、私と目を合わせないまま口を開く。
「すっごくみっともない事なんだけどさ、私吏音のことがさ、好き……なんだよ」
一瞬にして頭の中が真っ白になる。
嘘でしょ。
みっちゃんの好きな人は元彼さんじゃないの?
「みっちゃんの好きな人、元彼さんって聞いたことあったから、ちょっと驚いた」
精一杯私の心情が彼女に伝わらないように声を出す。
精一杯の表情、立ち振る舞い、話し方。
私の言葉に驚いた彼女と目が合う。
私の心情は彼女に伝わらなかったようで、彼女はあ〜と少し気持ちが軽くなったような表情で声を出す。
「たまに思い出すけど吏音のほうが好きだよ。てか、そもそも吏音のことが好きになったから別れたんだよね」
その言葉が私にはとても衝撃的で、言葉を失った。
.
2人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
袋(プロフ) - 今日読み始めた者です。 本音を言うとですね、最高。すこ。めちゃくちゃドキドキする。ウッヒョーォオオォオオォオオォオオォオオ!って感じです。語彙力なくてすみません!!!! (2020年1月27日 22時) (レス) id: b33350b182 (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 岩舘くんの下の名前は吏音です。李音とよく間違えます。間違ってたらぜひ遠慮なく言ってください (2018年4月30日 10時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 子月さん» ここまで言われたのは初めてです。ありがとうございます!文章上手に書けるよう頑張りますね (2018年4月24日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
子月(プロフ) - 甘さもあるけど少し暗い面もあって……私好みの物語です。占ツクのオリジナルだと中々見つからなかったので、この作品を見つけた時、嬉しかったです。続きを楽しみにしていますね! (2018年4月24日 19時) (レス) id: be8a18df5d (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 和花さん» ありがとうございます! (2018年4月5日 13時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ