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気づけば彼は例の廊下に立っていて、私も彼を眺める形でそこに立っていた。
けど彼はバレー部の主将を務めてるためあんまり長い時間はいられない。
それでも少しでも長く彼を見ていたい私は、友だちを連れて第一体育館前に立っていた。
もちろん友だちというのは由利のこと。
「そんなに気になるんだ〜」
「そんなんじゃない。ただ、どういう人か知りたいだけ」
「それを気になるっていうんじゃん」
素直じゃないな〜と小さくため息を吐かれる。
彼女はバレーは大好きだが男子のことが苦手なのは知っている。
だからあまり乗り気じゃない。
正直彼女を誘いたくはなかったが、友だちが少ない私には彼女くらいしか誘える相手がいないのだ。
まあ、時折彼女の中でバレーの方が男子への苦手意識よりも勝り「今のフォーム最高。打点も高いしパワーもすごい」と静かに歓喜の声を上げる。
「さすが白鳥沢。宝庫だわ……」
瞳の輝きがいつもと違う。
その瞳がより一層輝きを増すのが例の彼がボールを打つとき。
完璧なフォーム、美しすぎる、きれい、パワーもダントツ、左利きがなんたらと彼女は口に出すが私にはさっぱりだ。
ただ私にも分かるのは彼の打つ姿勢が綺麗だということ。
止まっているように見える。
そのくらい美しくて、私の描きたいという欲を湧かせる。
「ねえ由利」
「なに?」
「私、今ものすごく描きたい」
彼を描きたい。
見たまま、私が感じたまま描ける気はしないけど、ものすごく描きたい。
「うん、分かった」
彼らにバレぬよう静かにその場から離れる。
そうだ、彼を描くことは彼には内緒にしよう。
とびっきり上手く描いて驚かそう。
そして私が今泉Aであることを教えてあげよう。
あの無表情からは想像のつかない驚いた顔。
見てみたい。
勝手に彼の驚いた表情を想像して、面白おかしくて自然と笑みがこぼれた。
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京ちゃん。(プロフ) - 無理やり完結した感じになってしまい申し訳ありません (2020年2月22日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 更新遅くなりすみませんでした (2019年8月20日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - ぴのさん» ありがとうございます!訂正しました (2018年12月5日 12時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 天童さんの一人称は確か僕じゃなくて俺ですよー (2018年12月4日 22時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
ふじもん(プロフ) - 京ちゃん。さん» いえいえ!むしろ上から目線申し訳ないです(-_-;) (2018年9月29日 23時) (レス) id: 9aa2f2467a (このIDを非表示/違反報告)
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