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もちろん彼が来るという確信は無い。
ただ、彼に言われたことが嬉しくて廊下に載せられた自分の絵を見つめていた。
「綺麗、か」
思い出せば情けないほどに頬が緩み、ふふっと声が洩れてしまう。
こんなところ誰かに見られていたら恥ずかしい。
咄嗟に周りを見渡す。
こういうときって大抵誰もいなくて安堵のため息を吐けるものだけど、私の場合そうはいかなかった。
左を見て右を見た瞬間、私の視界に映ったのは目を大きく開いた例の彼が立っていた。
「ひゃあっ」と出かけた声を両手で抑え、その場に座り込む。
「い、いつの間に……」
「今来た。そしたらニヤニヤ笑ってて……」
「うるさい!忘れて!」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
熱い、絶対今顔真っ赤だ。
そんな私の様子を見てか、彼はふっと笑う。
「何笑ってんの」
キッと睨むが、彼は前のように無表情になっただけで怯むことは無い。
「今泉A、見つけられたか?」
あ、そう言えば彼とはその話で終わってたんだった。
「ううん」
気づけば咄嗟に否定していた。
良いことなのか、私は嘘をつくことが下手ではなかったので、自分でも驚くほどナチュラルに言っていた。
「そうか」
嘘だとバレたのかバレてないのか彼の無表情からは読み取れない。
普段ならここで会話が終わって立ち去っていた。
けど今回は昨日の友人の言葉のせいか、立ち去らずに彼に話しかけた。
「私がその、今泉って人を見つけてあなたに知らせて、あなたはどうするつもりなの?」
素朴な疑問。
もし彼に今泉って人が私だと教えたら、彼はどうするつもりなのだろうか。
それを知るまでは私が今泉Aであることは教えられない。
知ったとしてもことによっては一生教えないけども。
あのときと同じように彼は一切こちらを見ず、真っ直ぐな瞳で絵を見つめながら口を開く。
「どうするつもりなんだかな」
ふっと微笑みこちらを見る。
ドキッと胸が跳ね上がり、徐々に鼓動が早くなる。
もしかして、バレた?
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京ちゃん。(プロフ) - 無理やり完結した感じになってしまい申し訳ありません (2020年2月22日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 更新遅くなりすみませんでした (2019年8月20日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - ぴのさん» ありがとうございます!訂正しました (2018年12月5日 12時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 天童さんの一人称は確か僕じゃなくて俺ですよー (2018年12月4日 22時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
ふじもん(プロフ) - 京ちゃん。さん» いえいえ!むしろ上から目線申し訳ないです(-_-;) (2018年9月29日 23時) (レス) id: 9aa2f2467a (このIDを非表示/違反報告)
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