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彼女のおはようは、私に向けられていると思った。
「おはよう。牛島」
彼の名前が出て反射的に後ろを向くと、そこには彼がいた。
いつの間に?
「ああ、おはよう」と返す彼。
そして、私を見て今度は私にも挨拶をしてくる。
「おはよう」
「お、おは、おは、ょう」
あまりにもぎこちない挨拶に、由利が口を抑えて笑い出す。
あとで覚悟しとけ。
笑いがおさまらない彼女をじっと睨みつけていると、待っていたのか、後ろから声が降ってくる。
「ポスターの方はどうだ?」
とっくに教室まで歩いて言ったと思い込んでいた私はまたしても驚いてしまう。
「ぽ、ポスター……ね、一応イメージは固まってるの」
まともに彼を見れずに視線を逸らすと、こちらを見て笑いを堪える由利の姿が映る。
まじ、あとで覚悟しとけ。
「そうか、分かった」
用が済んだのか、彼はそう言って立ち去ってしまった。
度々思うのだけれど、現実は少女マンガみたいにはいかないんだな。
「少女マンガなら、ここでイケメンがヒロインに「ほら、行くぞ」って言うのにね」
笑いがやっとおさまったのか、気づけば彼女が隣で腕を組んでいる。
「そもそも、ヒロインじゃないから」
「だったらヒロインになればいいんだよ」
たまに由利はすごいことを言う。
きっと、可愛いからこそ、なろうと思えばなれる人だからこそ言える発言だ。
「じゃあ、まず可愛くならないとね」
私はまずそこからだ。
どの漫画のヒロインも可愛い。
それに比べて私の顔は、男女問わず幼い子に人気のヒーローのような顔をしている。
例のあの頭がパンでできたヒーローだ。
「女子なら誰でも可愛くなれるんだよ」
嘘だ。
そう思ったが、彼女のこの顔はマジだ。
知ってる彼女だから確信をもって言えること、だからこそこちらも尋ねる。
「どうやって?」
そう聞けば「知らないの?」と言って彼女は唇で弧を描く。
「女子にはメイクって武器があるんだよ」
その言葉に、私は唾を飲んだ。
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京ちゃん。(プロフ) - 無理やり完結した感じになってしまい申し訳ありません (2020年2月22日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 更新遅くなりすみませんでした (2019年8月20日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - ぴのさん» ありがとうございます!訂正しました (2018年12月5日 12時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 天童さんの一人称は確か僕じゃなくて俺ですよー (2018年12月4日 22時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
ふじもん(プロフ) - 京ちゃん。さん» いえいえ!むしろ上から目線申し訳ないです(-_-;) (2018年9月29日 23時) (レス) id: 9aa2f2467a (このIDを非表示/違反報告)
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