11 ページ11
.
「子猫が二人か。邪魔にならないよう、上で見てろ」
彫りの深い白髪の先生はそう言ってギャラリーで見るよう促してきた。
男子は苦手じゃないけど一人でいる勇気が出ずに由利を誘ってしまった。
「うちの男バレって、強豪なのにマネージャーがいないよね」
ギャラリーに上がり荷物を置くなりそんなことを言ってきた。
無表情なのが怖い。
男子苦手なのに無理に連れてきたからだろうか……。
「ごめん、帰り何か奢るよ」
「え?珍しく優しいこと言うね」
顔色を伺いながら言うと、彼女は想像していたのと真反対な反応を返してくる。
「な……怒ってるのかと思ったよ」
「私には笑うか怒るかの二択しかないんですか?」
「そんなことより、あの白髪の人子猫ってカウントしたよ。それでもって単位が匹じゃないー」なんて、安堵する私を他所にどうでもいいことを言い出す。
「集合!」
男子の低く大きな声が体育館に響き渡る。
彼だ。
それに応える形で部員たちの「はい!」の声が聞こえる。
そっか、彼はバレー部の主将なのか。
早速彼を描こうとカバンを漁り始めると、後ろからシャッター音が聞こえてくる。
「由利?」
「こうやって撮っておいた方が後で見れるし描きやすいでしょ?」
「頭良いね」
関心して褒めたのに彼女はこちらを振り向くこともなく「ばーか」と言ってきた。
腹が立つ。
バレー部の練習が始まりある程度時間が経つと体育館内は汗の匂いで充満してきた。
一応窓は開いているみたい。
それでも匂いに敏感な彼女はグチグチとぼやき、鼻を抑え始めた。
「私は新鮮で好きだけどな」
彼の匂いでもあると思うと余計気に入ってしまう。
「……Aって、ストーカー気質なところあるよね」
少し引き気味の声。
隣を見れば彼女がギョッとした目でこちらを見ていた。
「新鮮で好きって言っただけじゃん」
「いや、そのあとが問題発言だよ。牛島の匂いだと思うとー……ってところ」
「嘘?!口に出してた……!?」
恥ずかしい!!
新鮮だからというところしか口に出していないつもりだった。
気が緩みすぎて口に出ていたのかもしれない。
いくら気を許した相手だとしても今のは恥ずかしい。
「ほんと、いつの間に牛島のことそんなに好きになってたんだか」
半ば呆れ、そして面白がるように彼女はそう言った。
.
158人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京ちゃん。(プロフ) - 無理やり完結した感じになってしまい申し訳ありません (2020年2月22日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 更新遅くなりすみませんでした (2019年8月20日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - ぴのさん» ありがとうございます!訂正しました (2018年12月5日 12時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 天童さんの一人称は確か僕じゃなくて俺ですよー (2018年12月4日 22時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
ふじもん(プロフ) - 京ちゃん。さん» いえいえ!むしろ上から目線申し訳ないです(-_-;) (2018年9月29日 23時) (レス) id: 9aa2f2467a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ